最初の一歩
週末の大雪、驚きましたね。
雪が積もるとついやりたくなってしまうのが、
だれも踏んでいない雪に最初の靴跡をつけて、道を作っていくこと。
これはいくつになっても楽しいです。
でも勝負の世界では、この最初の一歩、かなり勇気のいることです。
バレエの世界的なコンクール、ローザンヌ国際バレエコンクールで、
今年、日本人ダンサーが1位と2位に輝きました。
同コンクールには、毎年のように日本人が入賞し、一昨年前も日本人が優勝。
今や日本のバレエの質の高さは、世界的にも注目されるようになりました。
これ、本当にすごいことです。
なぜなら、バレエは欧米人のものだと、ずっと思われてきたからです。
バレエは舞台芸術ですから、顔が小さくて、首も手足も長く、
足がまっすぐに伸びるダンサーが好まれます。
その点、やはり欧米人のほうが向いています。
実は、日本のバレエダンサーは、基本をしっかりと積み重ねた、
テクニック的に優れたダンサーが昔から多いのですが、
体格的なこともあったのか、
なかなか世界にチャレンジするダンサーがいませんでした。
そんな中、今から30年前、
今では世界的なダンサーとして知られる吉田都さんが
ローザンヌ国際バレエコンクールで賞を取り、
その6年後、熊川哲也さんが同コンクールで優勝しました。
熊川さんの踊りは素晴らしく、当時のコンクールでは禁止されていた
拍手が鳴り止まなかったほどでしたが、
それでも当時のフランス人解説者はこう言っていました。
「彼のテクニックや表現力は本当に素晴らしい。
でも、足がもうちょっと長ければね」
吉田さんと熊川さんは、その後、世界三大バレエ団の一つ、
英国ロイヤルバレエの最高位であるプリンシパルとして活躍しました。
今は世界中のバレエ団に日本人ダンサーがいるような時代ですが、
当時、外国人であり、他のダンサーに比べて体格的に恵まれているとは言えない
2人がプリンシパルとして活躍するのは大変だったと思います。
相当な努力と苦労があったはずです。
そんな2人を、日本の若いダンサーたちはずっと見つめてきました。
ローザンヌで日本人が優勝することが驚きではなくなってきたのは、
吉田さんや熊川さんのように、世界にチャレンジし、活躍することで、
世界のバレエへの道を作ったダンサーの存在があったからだと思います。
「日本人は日本国内のバレエ団でしか活躍できない」
と思っていたダンサーたちが、彼らの活躍を見て
「私も世界で活躍できるかもしれない」と思ったのです。
バレエに限らず、メジャーリーグでもサッカーでも、
そしてビジネスでも、 勝負の世界で、世界への最初の一歩を踏み出し、
道を作っていく人たちのチャレンジ精神とガッツは素晴らしいと思います。
道を作るのは困難の連続だろうと思いますが、
その道をたくさんの人たちが歩いて行くことができるのです。
これからもいろいろな分野で、
世界への道を作るチャレンジャーが
どんどん出てきてくれればいいなあ。
雪を踏みながら、そんなことを思いました。