できているつもり
テレビスポーツ教室という番組を見ていたときのこと。
学んでいる子どもたちの様子を観察していて、
「へえ」と思ったことがありました。
この日はサッカー。ゴールキーパーがどうボールを受けるか、
基本的な指導を日本代表の第3ゴールキーパーである権田選手が行っていました。
学んでいたのは、サッカーチームの子どもたち。
小学校5~6年生なのではないかと思います。
権田選手が、ボールをキャッチした後の倒れ方を説明します。
「ボールをキャッチしたら、下から順番に地面に着地します。
お尻、わき、最後に背中。絶対にしてはいけないことは、
腕から倒れること。腕だけでなく、肩も傷めます」
指導の後、子どもたち全員が教えられたことをやってみます。
でも、腕から落ちている子が大勢。
「あれ? さっき絶対にしちゃいけないって言ってたでしょ。
腕から落ちちゃだめでしょ」と、言いたくなります。
そこで、権田選手が一人ひとりを注意。
「腕から落ちてるよー」
注意された生徒は再度トライ。でも、まだ腕から落ちている子もいる。
普段、サッカーをやっている子たちなのに。
運動神経はいいだろうに。なぜ? ちゃんと聞いてないのかなあ。
気をつけてないのかなあ。と思いました。
でも、見ていて、そうではないことに気づいたのです。
子どもたちは、むしろ一言も聞き逃すまいと一生懸命に聞いている。
そして、言われた通り、お尻、わき、背中の順に落ちているつもりなのです。
ただ、頭で考えた通りに、体が動いていないだけなんです。
腕から落ちていると指摘されて初めて、できていないことに気づいている。
首を傾げて、何度もトライしています。
考えてみると、思った通りに体を動かすことは簡単なことではありません。
背筋をまっすぐに伸ばしているつもりでも、鏡を見たら全然まっすぐじゃない、
なんてことはよくあります。
以前、タレントの武井壮さんがテレビでこんなことを言っていました。
「アスリートに一番必要なのは、思った通りに自分の体を動かすこと。
常にこの訓練をする。これができる状態でスポーツを修得するのと、
これができずに修得するのでは、伸びるスピードが全然違うんです」
例えば、まっすぐ立ったまま、目を閉じて、両手を真横に上げる。
真横だから高さは肩の位置です。
武井さんによると、多くの人は、真横に上げているつもりでも、
肩より高かったり、低かったりしているのだそうです。
これを目で見て修正する。
すると再度トライする時には、ほとんどの人が真横に上げられるのだそうです。
こういうことを一つひとつ調整していくことが、
とても大事だと武井さんは言っていました。
武井壮さんと言えば、陸上十種競技の元日本チャンピオン。
この競技で彼が出した、100mの10秒54というタイムは
未だに破られていないのだそうです。
驚くのは、陸上を始めたのが大学に入ってからだということ。
わずか5~6年で、優勝するまでの実力をつけたということです。
そんな彼が言うのですから、この話は説得力がありますね。
「できているつもり」でいてはいけない。
これが大切だと思いました。
できているはずだと思っても、確認する。
そして、できていないことがわかったら、修正。
これを何度も繰り返すことで成長スピードがぐんと増す。
スポーツに限らず、とても重要なことですね。