思いやっていますか?
読んだ後、観た後に、深く考えさせられる本や映画。
なぜか私は、夏の間はこうしたシリアスな作品と向き合えません。
ギラギラした太陽と蝉の声が
深く考えるという行為に合っていないのかもしれません。
重そうだけど、この俳優でこの監督で、このストーリーなら観たいなあ、、、
私のウォッチリストには、シリアスな映画がどんどんたまっていっています。
ところが、先日突然「よし、考え込もう!観よう!」と思えました。
寒くなったことや、日が短くなったことなどと関係あるのでしょうか。
早速、リストの中の一本『アリスのままで』を観ました。
この映画は、言語学者である美しい女性アリスが
若年性アルツハイマーに冒され、
徐々に記憶と言葉を失っていく日々をつづったものです。
観るのが辛いシーンがいくつもありましたが、
主演のジュリアン・ムーアの演技はすばらしく、
アカデミー賞主演女優賞を受賞したのも納得でした。
さて、昨夜、あることから「思いやり」について考えさせられることがあり、
ふと、この映画のワンシーンのことを思い出しました。
夫、長女夫婦、息子、次女とともに食卓を囲んでいるアリスが
演劇をしている次女の公演について何度もたずねる場面です。
何時からなの? 劇場はどこ? スペルを言って。
次女は、時間と名前、スペルを丁寧に伝え、
アリスは真剣な表情でスマホにメモしています。
優等生タイプの長女は、いたたまれなくなり、
当日は私が付き添うから大丈夫、ママは覚えなくてもいい、
心配しないで、というようなことをアリスに言います。
すると次女が、どうして?なぜ止めるの?本人はメモすると安心するのよ。
ママをばかにしないで、と言います。
アリスは依然としてじっとスマホの画面を見つめています。
私がアリス本人だったら、、、、
たぶん必死でメモするだろうと思いました。
覚えられないかもしれないけど、覚える努力はやめたくない。
そう考えるのではないかと想像しました。
だから、嫌な顔一つせずに質問に答えてくれる次女の行動は
とても思いやりに満ちているように思いました。
一方で、長女の言動も理解できます。
優秀な学者であった母のそんな姿を見るのは悲しいし、
何度も同じことをたずねる母を不憫に思ったのでしょう。
一緒にテーブルを囲んでいる家族の気持ちを思いやったのかもしれません。
「思いやりを持って」と簡単に言われることが多いですが、
思いやることって、難しい。そう思いました。
「思いやり」でもう一つ。
未来の雇用についてのある論文で、
将来、人工知能に代替されにくい職業ランキングが発表された、という記事を読みました。
それによると、上位にランクしているのは、
手助けや思いやりなどが重視されるセラピストやカウンセラーだそうです。
記事には、勉強して知的レベルを上げることも重要だが、
人間らしさの原点となる思いやり力を磨くことは強みになる、と書かれていました。
家族、友人、同僚など、身近な人を自分はちゃんと思いやっているだろうか。
改めて考えてみようと思いました。