野人は「書いて」目標を叶える
「生真面目な男は、あまり仕事ができない。
不真面目な男には、仕事を任せられない。
最も頼りになるのは、真面目な野人である」
という帯に惹かれ、『野人力』という本を読みました。
『リング』、『らせん』の著者であり、
自らを野人と呼んでいる鈴木光司さんが、
娘に「生きる力」を伝えるというスタイルで書いたものです。
真面目な野人は、考えがぶれることがありません。
そして、一度設定した目的を叶えるために懸命に努力します。
野人は「体験」を重視するので、
目標達成のための手法が多少荒っぽいのですが、
真剣にゴールに向かって行きます。
鈴木さんは、10代の時に3つの目的を設定しました。
(1) 初恋の一目惚れの女の子を自分の妻とすること
(2) 自力で太平洋を横断すること
(3) 小説家として身を立てること
(1)は、小学5年生のときに転校してきた女の子を一目見て
「将来の妻がここにいる!」と思った瞬間に設定した目標だそうです。
中、高、大と片思いし、25歳くらいから直球で自分を売り込み、
断られるもめげずにプレゼンテーションしまくって見事目標達成。
途中、様々な女性とのつきあいの中で
コントロール力を磨いた結果ということです。
(2)は、小学校の卒業文集に書いた目標。
小説が売れずに苦労した時代に免許だけ取り、
ベストセラーが出るやいなやヨットを購入。
何の経験もないのに、家族を連れてまず横浜・初島間の航海へ出発。
その後も数々の航海での失敗から多くを学び、
着々と太平洋横断に向けて準備しているところとのこと。
(3)を叶えるのは一番大変だったようですが、
まず大学を文学部に絞り、
劇団でシナリオを書くという修行をし、
シナリオセンターに通ってどんどん書いて、
よしと思った内容を友人に話してリアクションを見るなど、
とにかく小説家になるための努力を続けます。
『リング』ができあがったのは32歳のときだったそうです。
鈴木さんが、真面目な野人として目標を叶えるために用いていた手法があります。
それは「書くこと」。
「目標を決めたら、そこに至るまでの道筋を文章で表現する。
書かれた文章に、他力本願と、論理的な矛盾がなければ、目的は実現する」
と、言っています。
論理的整合性のある文章が書けたなら、行動する。
その積み重ねから幸福はやってくる、と。
鈴木さんは、野人でありながら作家ですもんね。
いや、確かにそうだなあと思いました。
道筋をきちんと書けたなら、あとは実行すればいいだけ。
逆に言うと、書いているときに、「そんなわけないだろう!」と思ったことは、
いくら野人でも実行に移せないということですね。
正確に言葉にする。文章にする。筋を通して。
この大切さを改めて感じました。
正しい言葉で書かれた筋の通った文章は、強いのです。
これは、普段仕事をしていても感じます。
物語であっても、インタビュー原稿であっても、
単なるお知らせの文章であっても。
もっと勉強して、もっと書かなきゃ、と思うと同時に、
30歳を超えた頃にしまいこんだ野人力をそろそろまた
引き出したい気持ちになりました。
『野人力』、なかなかおもしろい本でした。