その場、「言う場」?「言わない場」?
5年ほど前、次男の小学校のクラス懇談会に参加したときのことです。
次男のクラスは、
学年の中でも特に落ち着きがないクラスだと言われていました。
途中で担任が体調を崩して休みがちになり、
そのまま長期で休みに入ってしまったことが大きかったのだと思いますが、
子どもたちがソワソワしていて、
保護者も何かにつけて過剰に反応するような状況でした。
さて、懇談会。
ベテラン先生の後を継ぐことになった新任の男性の先生から、
最近のクラスの様子について説明が一通りありました。
クラスに落ち着きがなく、
いじめっぽいことも起きているというようなことでした。
最後に保護者の方から何かありますか?と聞かれました。
小学校に入ったばかりの子どもたちが、
ピリピリした雰囲気の中で過ごすのはかわいそうだし、
それではなかなか仲良くならないと感じていた私は、
「1年生らしい、もっと楽しくてクラスが仲良しになるような
イベントも盛り込んではどうでしょうか」と提案しました。
長男のときは、
誕生日を迎える子にクラス全員がメッセージを書いて贈ったり、
給食のときに牛乳で乾杯する、
というようなことをしていて、とても楽しそうだったからです。
周りの保護者からも、
それはいいですねと言っていただき、
そこからは新たな提案も出てきました。
なかなか充実した懇談会になり、
終了後、保護者数人と「いい懇談会だったね」なんて話もしました。
ところが後日、ほかのクラスのお母さんからこんなことを言われました。
「1組の懇談会すごく荒れたんだって?
なんか、クレームする人がいて長引いたって聞いたけど」
おっと、びっくり!
私は、
「あ、それ私だ。クレームしてないし、懇談会は荒れてなかったよ」
と笑いながら言うと、彼女は
「あ、そうなんだ」と困った様子で言っていました。
ああ、これなんだなあと思いました。
会は何事もなく終わるのがいい、
と思われている場が多いので、
発言や提案はクレームと捉えられてしまいがちなのです。
まあ、学校の懇談会というものは、
「何かありますか?」
「ないようですので、これで終わります」
というのが、いつもの形なので、
「はい、あります!」とだれかが言うことで、
帰ろうと思っていた保護者が帰れなくなるということが起こります。
迷惑に思う人が出てくるのもわかります。
そしてこれ、ビジネスの会議でもそうですね。
「何かありますか?」
「ないようですのでこれで進めます」
で終わるはずのところ、
だれかが発言することで長引きますし、
その場が「このタイミングで、それ言うか?」となることもありますね。
こうしたことが起こるのは、
参加する人々の「場の捉え方」が違うからだと思うのです。
「意見を言う場」と思っている人と、
「意見は言わずに、何事もなく終わらせる場」と思っている人が
同じ会議に参加しても、うまく進むはずがないと思います。
世の中、「発言しよう」「言いたいことは言おう」という流れがありますが、
言える場が整っていなければ、
やはり言えるようにはならないと思うのです。
同じように、
「コミュニケーションの基本は聞くことから」とも言われますが、
そもそも聞く場だと思っていなければ、
聞こうともしないのだと思います。
なので私は、まず、
しっかり「場を設定し、場を進行する」ことが
大事なのではないかなあと感じます。
つまり、ファシリテーションです。
といっても特別なスキルのことを言っているのではありません。
会の始めに、
「この場の目的は~です。
~な意見をどんどん出しましょう」
と進行する人が言うだけでも、
「え?意見するなよ」と思う人が少なくなると思いますし、
「このタイミングでその意見?」となる会議の場合は、
「何かありますか?」ではなく、
「~について、何かありますか?」と、
絞るだけでも違うのだと思います。
ファシリテーションと言うと大げさですが、
本当にちょっとした場のしきり方の工夫で変わってくるのだと思います。
と、ここまで書いて、
自分自身のことを考えてみると、
目的がわからない会議や何についての意見が求められている会議かわからない場、
あるなあと思いました。
もっと言おうよ、もっと聞こうよ、の前に「場」について、
意識を向けることを忘れないようにしたいと思います。