「考える」を考える
今年の4月に社会人になった世代は、「フルゆとり世代」と呼ばれています。
唯一、小学校入学から高校卒業まで「ゆとり教育」を受けた若者たちです。
青年期にはスマホがあった世代のため、スマホネイティブとも呼ばれています。
私が、「フルゆとり」という言葉から受ける印象は、
「かなりマイペースでガツガツしていない、
どちらかというと消極的で、ゆったりした人たち」というところですが、
実際のところはどうなのでしょうか。
新入社員研修を手がける株式会社ファーストキャリアが行った
「新卒・若手層育成研究所」調査レポートを見てみました。
調査結果によると、今年の新入社員は、
「積極的で活発な社員」なのだそうです。
過去5年のアンケートでは、新入社員の行動特性として、
「まじめ・素直」「周囲との関係性を築くことが早い」「集団では出過ぎない」という
「おとなしくて同調性重視」の傾向が多く見受けられましたが、
今年は「自分の考えを持ち、積極的で発言力がある」
「自分の考えに合致しないことに関しては、時に排他的になる」との回答が増加。
新たに「積極的で自分基準重視」の傾向が加わったことで、
これまでの「おとなしくて同調性重視」の傾向を持つ新入社員との
二極化が進んでいると捉えられる、とまとめられています。
回答をもう少し詳しく見てみました。
注目したのは、本人たちが意識しているプラス面の項目です。
1位「コミュニケーション能力が高い」(60%)
2位「向上心、積極性が高い」(42%)
一方で、マイナス面の項目は、
1位「主体性がない、積極性にかける」(46%)
2位「控え目でおとなしい、内向的、周りに流される」(33%)
むむ? プラス面の裏返しのような項目です。
これはどういうことなのか。私なりに考えてみました。そして、
これは「自分で考えることに慣れていない」ということなのかも、と思い至りました。
気づいたときにはスマホがあった世代ですから、
SNSの影響もあって、外に向かって積極的に自分をアピールするのは得意。
だから、コミュニケーション能力が高いにはイエスだし、
向上心、積極性もイエス。ノリがいいとも言えますね。
でも、いざ職場でのリアルなコミュニケーションとなると、
ノリでは行けないので、どうしていいかわからなくなる。
考えることに慣れておらず、自分の考えがまとまっていないので、
控えめで内向的になってしまう、というところなのかもしれません。
と、偉そうに言ってみましたが、
この世代は「フルゆとり」なんて言われているので、興味深く語られるだけで、
新入社員が「考えることに慣れていない」のは当然では?
と、これを書きながら思ってきました。
私は、バブル崩壊直後に社会に出ましたが、
まだまだバブル世代の若者だったことと、
入社した会社が自由な社風だったこともあり、
今考えるとゾッとするほど生意気な新入社員でした。
勢いだけで、考えなんて全然なかったと思います。
考えている風には振る舞っていましたが(汗)。
では、「考える」とはどういうことなのでしょう。
『ぐんぐん伸びる子は何が違うのか』の著者であり、
現在は子育てをする保護者向けだけでなく、社会人向けの研修も行う石田勝紀氏によると、
「考える」状況になるのは、以下のいずれかのことをしているときだと言います。
「自分の言葉で語れること(What)」
「疑問に思うこと(Why)」
「手段や方法を思いつくこと(How)」
職場よりの言葉に置き換えると、
「課題は何か?(What)」
「なぜそうなのか?(Why)」
「ではどうすればいいのか?(How)」
どうでしょうか?
そう言われてみると考えているとはいえないかも、なんてこともありそうです。
さて、指導する立場に立ったとき、注意すべきことがあると石田氏は言っています。
それは、「アウトプットの質を問うと台無しになる」ということ。
「質問をして、相手が答えられなくてもいい」ということを知っておくことだそうです。
確かに、「考える」と「考えたことをまとめて説明する」は、別のスキルです。
考えることを始めたばかりの人に、
「説明できないのは、考えていない証拠だ!」などと言うと、
うまく説明することに意識が向いてしまい、考えることをやめてしまいます。
これは、子どもにも、大人にも言えることですね。
ちなみに、前述した調査で、「フルゆとり」世代が職場に望むことの上位が
「実践の機会を与えてほしい」(52%)と
「自ら考える機会を提供してほしい」(50%)でした。
考えさせようと思っていたのに、どんどん考えなくなってきた、
なんてことのないように注意したいものです。