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「おもしろ水」、どうやって汲む?

「『おもしろ水』が両手に汲まれて、
それをいかにこぼさないように
ゴールまで運ぶか、という感覚なんです」


制作の過程でどこに一番力を入れるか、
という質問に対し、こう答えたのは、
「20世紀少年」や「YAWARA!」の著者、漫画家の浦沢直樹氏です。


浦沢氏は、例えば制作過程が10段階だとしたら、
10が一番最初に見えると言います。
ゴールがクリアに見えて、
おもしろ水がいっぱいに汲まれる。
そのおもしろ水をまったくこぼさずに
ゴールまでたどり着いたら、
世紀の大傑作になるはずだと語っています。


しかし実際は、
たとえば読者にとってわかりやすくする
という作業を加えたりしているうちに、
ポタポタ水がこぼれていってしまう。


でも、浦沢氏にとって、
途中で水がこぼれてしまうのは予めわかっていること。
むしろ、水をこぼさないと、あまりにも
伝わらないものになってしまうと話します。


こんな言い方もしていました。


「だから、フランク・ザッパから、
ビートルズくらいにするには
どうしたらいいかを考えるかんじです」


フランク・ザッパとは1940年生まれの
アメリカの前衛ロックミュージシャン。
圧倒的な存在感で、亡くなるまで
自分のやりたいことを貫いた人です。


浦沢氏は、若いころは自分もフランク・ザッパ寄りで
暴走していたけれど、
より多くの人に届けることが本当は重要なんじゃないかと気づき、
ビートルズくらい受け入れられるようには
どうすればいいかを考えるようになったと
話しています。


おもしろくて、わかりやすい表現だなあと思いました。
漫画だって、音楽だって、小説だって、
届ける人がいるわけですもんね。
あまりにも独りよがりだと、
コアなファンにはがつんと届くかもしれない
けれど、多くの人には届かない。


浦沢氏は、「本当にいいものを作れば、
多くの人が振り向いてくれると思っています。
良かったけど売れなかったね、というのは、
どこかに良くない部分があったからだと
思うんです」と語っていて、
なるほどなあと思いました。


漫画の制作と、企業の広報物の制作を
同じようには語れませんが、
いくらユニークで、かっこいいものを
作ったとしても、
届けるべき人に伝わらなかったら意味がない
というところは一緒ではないかと思います。
伝えるためには、おもしろ水が
こぼれるのはしょうがない。
そう考えると、最初に汲むおもしろ水は、
できるだけたっぷりのほうがいいですね。


では、どうしたらおもしろ水をたっぷり汲めるか。
浦沢直樹氏もそうですが、
世の中の天才と言われる人たちは、
「あ!」と思った瞬間、
両手にたっぷり水が汲まれているのだと
思います。でも一般人はそうはいきません。


じゃあどうするのかというと、
これはもう、普段からいろいろな物に
触れるしかないのでは、と私は思います。
大事なことは、触れたらスルーしないこと。
映画でも本でも、チラシでも、
電車の中刷りでも、テレビでも、音楽でも、
目や耳に入ったらスルーせずに考える。
すると、「あ、これって、
こことつながっているんだなあ」とか
「この音、こういう意味なのかな」とか、
いろいろなことに気づいて疑問がわきます。
それを繰り返すことで、
おもしろ水のモトがたまっていくのかなと感じます。


さて、夏っぽくない日が続きますが、
我が家の子どもたちは今週から夏休みに入りました。
彼らと一緒に夏のおもしろ水、
汲まなきゃなあと思っています。

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