2つの脳内システムの話
人間の判断や決定は、
「感情」と「理性」という
脳内の2つのシステムで担われている。
行動経済学の視点から書かれた、そんな興味深い記事を読みました。
行動経済学者である友野典男氏によると、
人間は物事を判断し、何かを決定するときには、
直感的にすることもあれば、よく考えてからすることもあり、
前者の直感的な判断や決断を
脳内の「反射システム(システム1)」が担い、
よく考えてからの判断や決断を
「思考システム(システム2)」が
担っているのだといいます。
システム1は、無意識のうちに自動的に発動するのが特徴。
素早く、労力をかけずに判断を下し、
同時並行で複数の作業をこなすことが可能です。
これに対してシステム2は、
思考・熟慮を伴うため、意識的に起動しなければならず、
時間がかかり、労力やエネルギーを要します。
それゆえシステム2は、なかなか起動しないし、
起動しても長続きしないという特徴を持っているといいます。
「感じる」ことはいつでもできるが、
「考える」ことは、少々手間がかかることだからだ、
と説明されていました。
さらに、記事には、
生活上のたいていの意思決定は、
システム1で十分こなせる、とありました。
日常の買い物や世間話なら、
いちいちシステム2による熟慮を経なくても、
システム1の直感的な素早い判断で
十分に用が足りるから、だそうです。
ここまで読んで、私は、
もやもやが晴れて、すっきりしました。
「考える」のが得意とか得意じゃない、とか、
好きとか、好きじゃないとか、
そういう話をよく耳にしますが、
それがどういうことなのか、よくわからなかったからです。
でも、そういうことだったのか。
脳内のシステム2を起動するか、しないか、
という話だったんですね。
でも、じゃあ、システム1だけでまあまあやっていけるの?
ということになりますが、記事を読み進めると、
システム1、2の連携がいかに重要かが書いてありました。
というのも、システム1は、直感で起動することから、
バイアスがかかった判断をしやすいという弱点があるため、
システム1の判断・決定をモニターして、
ゴーサインを出したり、 逆にシステム1の判断や決定を
覆すために、システム2の起動が必須になるというのです。
でも、システム2は前述したように、起動に労力を必要とします。
うまく起動させる方法は、あるのでしょうか。
一つは、システム2を起動させやすいよう、
システム1によるバイアスを減らすことだそうです。
そのために必要なことは、
「バイアスは誰にでもある普通のことだ、と考えること」。
バイアスは誰にでもあり、
自分だけ特別なわけではないと思うこと、だそうです。
二つ目は、こちらもバイアスを減らすために、
「どんなバイアスがあるのかを知っておくこと」だそうです。
世の中には、様々なバイアスがあります。
たとえば、利益と損失が同額であれば、
利益から得る快感より損失による苦痛のほうを大きく感じる
「損失回避バイアス」、
物事がうまく回っていたら、
新しい方法を試そうとは思わない「現状維持バイアス」、
多数派の意見にとりあえず合わせようとする「同調バイアス」など。
こうしたバイアスの存在を知っておくだけでも、
気づきにつながるといいます。
三つ目は、
外部者や第三者の意見を参考にすること。
意思決定においては自らの感情が大きく影響しますが、
当事者ではない第三者や外部者の意見を聞くことは、
感情部分をおさえることにつながります。
そして最後は、判断から実行までの間に
意識的に時間を置くことだそうです。
そうすることで感情的な部分が薄くなり、
判断や決定を見直すことができるといいます。
現在、新型肺炎の影響で、社会が混乱しています。
こんなときこそ、脳内のシステム1と2を意識して、
落ち着いて判断、行動することが重要だと思いました。