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見えていないことに気づく

作家の辻仁成氏のブログが好きで、よく読んでいます。


息子さんが我が家の長男と同学年であり、
パリでの子育ての話、教育の話、料理の話がすごく興味深いのです。


辻氏は小説家やミュージシャン、映画監督など、
いくつもの顔を持っていますが、
ここ数年注目されているのは、やはり料理人としての顔。
今では高校生になった息子さんのために
辻氏が作り続けてきた料理の数々は、
『パリのムスコめし』という料理本にもなりました。


しかし、辻氏、
昔から料理が得意だったわけではありませんでした。
7年前、突然息子さんと2人家族に
なってしまったときは、
毎日ハンバーガーを食べていたとか。
パリでどうやって2人で生きていくのか、
途方に暮れていましたが、
ある日、なんとか家の中を明るくしなくてはいけない、
という思いで、食卓から元気にすることを決意。
キッチンに立つようになったのだそうです。


辻氏のブログには、その日作った料理が
紹介されていることが多いのですが、これがすごいレベル。
簡単なフランス料理、和食はもちろん、
デザートまで軽々作っています。
フルーツタルトやショートケーキ、
バケットまで焼いてしまう。
オリジナルのレシピも多く、
料理歴7~8年でこんなに自由自在に
料理ができるなんて、びっくりです。


これは私の勝手な推測ですが、
辻氏のように料理がどんどん上手くなる人、
しかもオリジナルレシピを考案できる人は、
料理中、見えていないところで
自分が何をしているのかをつかむ力があるのだと思うのです。


どういうことかというと、
たとえば、レシピをただ追っているだけだと、
酒大さじ2、みりん大さじ2、しょうゆ大さじ1.5を
単純に計って入れているだけなのですが、
何をしているのかをつかむのが早い人は、
ここですでに割合の法則を理解している。
さらに、それぞれの調味料がどんな役目を
果たしているのかも、おそらく理解している。
そこがわかると、たぶん別の料理にも
応用できるようになると思うのです。


辻氏は、たぶん、そんな要領で、
フランス料理も、デザートも、
調味料のだいたいの割合や役目、
それらを使うとどんなできあがりになるのかを
感覚的に把握されたのではないでしょうか。


これは料理に限ったことではありません。
たとえば、スポーツでも同じことが言えます。
スポーツの上達が速い人も、
直接、見えていないところで
自分が何をしているか、気づいているのだと思います。
見えているところではラケットに
ボールを当てているだけなのですが、
実は重心の移動がポイントだと気づいている、とか。


何年か前、雑誌のインタビューで
当時のレノボの社長、留目氏が、
「物事の本質をつかむには、因果関係を見極めて、
何をどうすればどんな結果が出るのかを
理解することが必要だ」と言っていました。
料理もスポーツも、ほかのことも、
たぶん、上達が速いということは
本質をつかんでいるということなんだろうなと思います。


なんて書きながら、いろいろ考えてみると、
毎日取り組んでいる様々な物事の中にも、
見えていないことがたくさんあるような気がしてきます。
そこを見ようとしたら、
今まで「作業」と思って淡々とこなしていたことが、
突然そうじゃなくなり、飛躍的に上達したりして・・・
ちょっと楽しくなってきたので、
身の回りの「見えていないこと」、見つけてみたいと思います。

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