細部で勝負
コンクールというものを覗くのが好きです。
今年は、夏からショパンコンクールに
どっぷりはまりました。
私は子どもの頃に少しピアノをかじったくらいですし、
しかもやめた理由が「練習が嫌いだったから」なので、
専門的なことはよくわからないのですが、
ショパンの音楽はずっと好きで、
5年に一度開催のこのコンクールは
毎回とても楽しみでした。
しかも今回は全演奏がYouTubeで配信され、
連日、大興奮の日々を送りました。
先週発表された結果はニュースでも
大きく報道されましたね。
ファイナルには反田恭平さんと小林愛実さんが
進んでいましたが、お二人とも入賞。
しかも反田さんは2位でした。
いやあ、すばらしい!
さて、私のような素人でも、
ずっとピアノ演奏を聴いていると
同じ種類のピアノでも弾く人によって、
全然違う音が出ることに気づきます。
同じスタインウェイというピアノでも
Aさんが弾く音とBさんが弾く音が違うのです。
手の大きさや指の太さや長さ、体格など、
身体的な特徴によるものだとは思うのですが、
どこまで細かくタッチにこだわるかということでも
音に違いが出るのかもと想像しました。
たとえば、反田さん。
弱い音が本当に弱く、強い音はドラマチックに強く、
一音一音キレキレなのに柔らかいという
とてもすてきな演奏でした。
指先まで意識して細かくコントロールして
いるのだろうなと思いました。
指先まで意識することで思い出したのが、
現在、新国立バレエ団の芸術監督をしている
吉田都さんの英国ロイヤルバレエ時代の
ドキュメンタリー番組。
同じバレエ団の仲間が、
「都はトウシューズで着地するときにほとんど音がしない。
アメージングだ」というようなことを言っていて、
その理由が、都さんは足の指一本一本を
動かせるからだというんですね。
番組内で実際に指を動かして見せていましたが、
足の先まで細かくコントロールすることが
踊りの質の向上につながっていると言っていました。
ピアノでもバレエでも、
それ以外のいろいろな世界でも、結果を出す人は
やはり細部まで神経を行き届かせて
仕事をしているのだと思います。
そしてその細かなこだわりが差を生むんだろうなあ。
社会では、アジャイルというワードを
耳にすることが多くなりました。
速さ、俊敏さがますます求められる時代です。
でも、ワードばかりが一人歩きして、
どうやってこれを実現するかはぼんやりしている印象。
単純に仕事を速くすることを考えると、
今まで細かく気を配っていたことをやらないなど、
雑にやる、という方向に走ってしまう可能性もあります。
でも、そもそもなぜアジャイルなのかというと、
競争に勝っていくためなのだと思います。
すると、勝つための差を生まなくてはならない。
そして差はやはり細部に出てくるのだろうと思うのです。
雑にやるのではなく、細部までしっかり仕事をし、
全体のプロセスの組み方や
周囲との連携の仕方を工夫して
アジャイルを実現することが必要なのだろうと思いました。
さて、秋も深まってまいりました。
私はショパンコンクールに影響されたので、
ただ所有していただけの楽譜を引っ張り出してきて
まだしばらく芸術の秋を続けたいと思います。
体調に気をつけて、秋を楽しんでまいりましょう。