強めて、弱める
最近、YouTubeで透明水彩の描き方の
動画を視聴しています。
柴崎さんという70代の日本人男性が
講師を務めているチャンネルで、
とても見応えがあります。
何といってもプログラムが良くできています。
たとえば、
超初心者用にわかりやすく解説するコーナー、
視聴者から募った作品に先生がコメントし、
お直しするとしたらココを示すコーナー、
新しい画材を試してみるコーナーなど、
いくつかのコーナーが用意されていて、
視聴者を飽きさせません。
中でも私のお気に入りは、
視聴者から募った作品を
先生がお直しするコーナーです。
ちなみに私は、絵は描いておりません。
なので、自分の作品づくりに生かすとか、
そういう目的はないのですが、
それでもこのコーナーを見てしまうのは、
絵を描くためだけでなく、
ものづくりに共通する学びがあるからです。
先生のもとに届く作品のレベルは
さまざまですが、
比較的上級者レベルのものが多く、
もう直すところないんじゃない?
と思うほどの出来栄えのものもあります。
でも、よく見ると、全面にわたって
同じ調子で描き込まれている作品が
多いことに気づきます。
とても上手なのですが、写真でいうと、
全面にピントが合っている状態です。
先生は、
「これはタイトルがこうだから、
たぶんこの方はこの建物を描きたかったのでしょうね」
というふうに、まず伝えたいものを決め、
構図や明暗、強弱を工夫して、
強めるべきところを強く、
逆に弱くするところを弱めていきます。
建物と同じくらいの面積で描き込まれた空や
地面を大胆にカットした構図にしたり、
明るいところと暗いところ、
細かく描き込むところと省略するところの
差をつけたりといった具合です。
そうして出来上がった絵は、絵全体ではなく、
強くしたところにまず目が行くので、
作品の印象ががらりと変わります。
絵のタイトルの印象も強くなるので、
感情にうったえるものも大きくなります。
なるほどなあと毎回感心してしまいます。
これ、原稿作成も同じなのだと思います。
たとえば、「何を伝えたいか」が
あやふやな状態だと、
いくら小慣れた表現を多用して仕上げても、
「つまり何?」と読んだ人が疑問に思う
原稿になってしまう。
あるいは、インタビューをしたとして、
聞いたことをどんどん入れ込んで仕上げるのも、
一見盛りだくさんではありますが、
メッセージの強い原稿にはなりません。
「何を伝えたいか」をしっかり決めて、
強めるところを強め、
弱めるところは弱める。
絵でも写真でも音楽でも、そして原稿でも、
だれかに伝えることを目的としたものづくりに
重要なことは共通しているんだなと
改めて感じました。
さて、4月も半分終わりました。
気温差が激しい季節ですが、
体調に気をつけてまいりましょう!