「今夜はカレーをつくろう」というビジョンの伝え方
ある人から、自分が読んでおもしろかった本としてコーチングに関する1冊の本を薦められました。というか、貸していただきました。彼女も外資系企業でこれまでマネージメントに携わっており、マネージメント能力はワタシなんぞよりはるかに上と日頃感じていただけに、これは読まないとダメでしょ、と思った次第。タイトルは「やる気のコーチング」(菅原裕子著)です。借りたばかりなので、実はまだよく読んでいません。でも、彼女の「ここがおもしろかった」というページについては、さっくりながらもその場で目を通し、少なくても刺激を受けました。
目を留めたのは、ビジョンを伝えるときの伝え方として「今夜はカレーを作ろう」と語るこべきとの重要性について書かれていた点です。「カレーを作る」と言うことが予めわかっていて、肉を買いに行かされるのと、ただ単に「肉を買って来い」と言われるのとでは、実際に買い物に行った人が取る行動が違ってくる、ということが書かれていました。
確かに、カレーを作るとわかっていれば、「肉を買って来い」とだけ言われるよりも、仮にそれが調達できない場合の対応の仕方は違ってくると思います。少なくても肉の代用品として「アジの開き」を買ってしまうことはなくなるでしょう。しかし、カレーを作ることが示されていなければ、動物性タンパク質なら代用できると考えてしまって、「アジの開き」を買ってしまってもおかしくはありません。
そういう意味で、「今夜はカレーを作ろう」という伝え方を重視した組織であること、これは元気のいい組織を作る上で不可欠に違いありません。
しかし、「今夜はカレーを作ろう」ですべてが解決できるかというと、疑問もあります。実際、コミュニケーションを重視しようという姿勢を持つ経営者の多くは、「今夜はカレーをつくろう」という視点で話をしている。そして、にもかかわらず、「伝わらない」ということが起きているような気がします。なぜでしょう?
まず第一に、作るものが「カレー」ならいいのです。みんなが食べたことがありますから。でも、たとえば「最近ニューヨークで流行っている、コレステロールゼロの◯◯という食べ物を作ろう」となったら、どうか? 誰も食べた経験がないものがビジョンになるということは、いくらでもありえます。
第二に、作るものがカレーであることはわかったとしても、「なぜ今日カレーなのか」ということが理解できて初めて「自分の買い物の意味」がわかってくる。ところが、「なぜ」が説明されていないと、「なんでハンバーグではなくカレーなんだ」と思ったり、「また今夜もカレー?」と思ったりするのが人情というものでしょう。
いずれの場合も、組織の中では、「一度説明したからわかっているはず」と考えるのは誤りだと思います。ビジョンを伝えるには、根気が必要。これは、私たちの会社のような小さな企業でさえ思うことですから、ましてや大企業になればなるほど、ビジョンを伝えるための根気はより一層必要なのだろうと思います。
これから作ろうとしているものが何であり、なぜそれを作るのか、まずはインナーに対して伝えていく努力をしていきたいものですね。