複雑性:おぼえやすさとわかりやすさの違いとは?
こんにちは、グラスルーツのオノです。
80歳を迎えた実家の父は、最近めっきり健忘症が進み、毎日いろいろなモノをなくすので、しょげています。そんな父に、脳科学者:茂木健一郎氏の記憶法を紹介したのですが、実践する様子もなく、なぜかナンクロ(クロスワードパズルの一種)に走る始末。リハビリ方法が違うような気がするな?。父は昔から記憶力に自信があったからなのか、それを失っていくことがよけいにショックのようです。ガンバレにっぽん! おっと間違え、がんばれオノパパ!
ワタシが父に紹介した茂木健一郎氏の記憶方法は、NHKの番組「プロフェッショナル仕事の流儀」で見たものでした。多少意訳になりますが、視覚からだけインプットされた情報よりも、少し複雑化されて五感からインプットされた情報の方が、脳にとっては記憶されやすいということがあるようです。記憶の途中で、声を出す、カラダを使うということが有効らしいのです。そうすることで、記憶したいその情報と覚えようとしたときのシーンとが一体となって記憶されるようです。番組では、そんな内容が実験を交えながら、紹介されていました。
情報を「少し複雑化して」「五感にインプットする」。この一文には、いろいろなヒントがあります。
とかく私たち情報の編集者たちは、「わかりやすさ」を追求します。もちろん、それはそれで大切なことなのですが、ともすれば「わかりやすさ=シンプル」と短絡的に考え、それに基づいてのみ表現を立案しがちです。
けれど、わかりやすいことと覚えやすいことは別のことなのですよね。たとえば、当社の社名が株式会社グラスルーツではなく、株式会社ブランディングサービスとか、株式会社クロスメディアクリエイションだったとしたら、わかりやすさは増す反面、あまりに一般名詞すぎて覚えにくさがあるのは否めません。「グラスルーツというのは『草の根』という意味です」と言葉を添える方が、それらの名前よりもまだ覚えていただけるような気がします。何らかの形で、脳にひっかかりを持たせる工夫。それが覚えてもらうためには重要なのだと思います。
情報編集の仕方はシンプルでありながらも、情報発信の方法にはほんの少しの複雑さをエッセンスとしてまぶす。これは、意外にも多くの人の脳みそが歓迎する要素であるような気がします。しかし、それは表現者/情報発信者のスキルとしてはあまりにも高度なこと。出来る人はとても少ないはずです。で、あるならば、せめて表現者/情報発信者は「わかりやすいことと、覚えやすいことは別である」ということを自ら戒めて、制作に望む必要があります。
言うのは簡単ですが、行うのは難しい。でも、ブランディングにおいて「覚えてもらう」は重要な要素ですから、逃げずに、あきらめずに取組みたいものです。
【今日の問いかけ】覚えてもらいたいことを覚えてもらえるようにするために、何らかの工夫、していますか?