中性的商品の可能性?「Dellの女性向けサイト炎上」再考
MarkeZine発5/21付け記事に「Dellの女性向けサイトが炎上、ジェンダーマーケティングの難しさ」と題するものがありました。他のサイトにも記事提供されているようでしたので、ご覧になった方もあるかもしれません。
要約すると、Dellは女性向けノートパソコンの情報サイト「Della」を5月にオープンしたのですが、パソコンの活用法を紹介する「tech tips」の内容が、あまりにステレオタイプ的なものであったために、女性から(一部の記事によれば、男性からも)反感を買った、ということのようです。料理のレシピ、カロリー計算などのコンテンツが、それです。確かに、ベタな女性的コンテンツです。
この記事がことさらワタシの印象に残ったのには、ワケがあります。ちょうどその頃、なぜ家庭用の洗剤や石けん、ティッュペーパーなど、スーパーで買うような諸々の商品に気に入ったデザインのものが少ないかと考えていたからです。そうこう考えるうちに、家電や女性向けサイトのデザインまでもが気になってきました。すべてがそうだとは言いませんが、なぜか女性マーケットを意識したものは、わかりやすく例えるとピンクが多い。ピンクでなくても、パステル系の色彩であったり、花柄であったりすることが多いような気がします。あるいは可愛いイラストやアイコンが描かれてあったり…。ベビー用品のメーカーサイトは、その典型です。
ピンクやパステルトーンが好きな女性が多いのは確かだと思います。感覚値で言えば、7割前後の女性は好きかもしれません(類は友を呼ぶのか、ワタシの周りでは極めて少ないですが)。
けれども、100%ではない。少なく見積もって1割、多めに見積もっても3人に1人は、むしろピンクは嫌いだと思います。ここに、メーカーはもっと注目すべきなのではないでしょうか。マーケットとしては女性ターゲットであっても、敢て女性っぽさ(って何なんですかね?)を取り除いた商品、いわば中性的な商品があったら、1割から3割のシェアを獲得できる可能性がある。
Dellのサイト炎上にしろ、プロダクトデザインにしろ、こうしたことが起こるのは私たちの中にある固定観念のせいだと思います。「ターゲット=女性」と設定された時点で、「ターゲット=女性=ピンクorパステルor花柄」というような、ビジネスとしての図式が暗黙知としてイメージされているような気がします。これは、企業の意識の問題だけなのではなく、外部のプランナーやディレクター、デザイナーの意識の問題でもあります。「ほんと?」という自問が足りていない。それを押さえておけば「大半の人は受け入れるだろう」「(だから)クライアントも通すだろう」という潜在意識が、知らず知らずに多くのクリエイティブサイドにあるのではないでしょうか。
5/17付け日経でも取り上げていたように、最近の企業の動きとして、「ダイバーシティ(多様性)」への活動が活発です。当社のクライアントでも、極最近ダイバーシティ・プロジェクトを社内的に立ち上げた企業があります。
ダイバーシティの意味するところは「多様性」ですから、女性VS男性という発想はそぐわないですし、そもそもそれがどんな対立構造であれ、対立構造を生んでいる時点で「多様性を受け入れる」こととは相反するように思います。
ですから、ワタシがここで書きたいことも、男性VS女性ではありません。
ただ単に、1割から3割の女性がピンク(的なもの)がキライであるかもしれない事実は注目に値する、ということを書きたかったのです。なにしろ、それがシェアに直結しますから。
固定観念は難儀です。とっぱらいたいものですね。固定観念には逆らって生きていきたいものだと、いつも思って暮らしているオノでした。