デザイン思考の仕事術(棚橋弘季著)
こんにちは、グラスルーツ小野です。
さて。。。。
最近、読むべき本が貯まっています。大多数の本は人から推薦された本です。「人は人に本を薦める」。そうやって、知識見識は広まって行くんだな、と痛感します。
さて、ここでご紹介する本も、やはり人から薦められた本です。ちょうど読み終えたので、ご紹介します。
デザイン思考の仕事術」(著:棚橋弘季、刊:日本実業出版社)
この本は、<a href="http://www.gift-for.co.jp" target="_blank">ギフト</a>の平岡さんから教えていただいた本になります。読む前に、平岡さんから「グラスルーツの仕事のスタイルに近い内容なのでは?」と言われていたのですが、ワタシの読後感想も同じようなものでした。本質はとても近いな、と。
あ、ごめんなさい。これじゃ、どんな本なのかがわかりませんよね。かいつまんで書きます。
この本は、そうですね。要約が難しいな。。。
モノ作りを含めたデザインの仕事や広く仕事全般(特に企画)の進め方に関する新たなアプローチを提示した本で、ユーザ視点でのモノの作り方やプロジェクトの進め方を提唱しています。もう少し具体的に言うと、「エスノグラフィ」という考え方を重んじ、グループワークの重要性やそれを行うための方法論(KJ法やペルソナなど)を提示している本だと言えます。エスノグラフィというのは、文化人類学における観察手法に端を発するもので、観察を重視し、観察を通じて人となりや生活をより深く理解しようという考え方です。
「ユーザ視点でのモノの作り方」と聞いても、あまり新鮮に感じない方も多いと思います。同じような旗印は、これまでもあったような気がするからです。
ところが、今までの「ユーザ視点」とこの本に書かれている「ユーザ視点」のどこが違うかと言えば、ワタシの解釈では「本気度の違い」です。この本に書かれているように進めるのは、ホント、大変ですからね。とても丁寧な仕事の仕方ですし、その分、当然時間がかかります。ところが、アメリカでは既にそういった動きがあるらしい。本気でやるなら、ここまでやるべきだよねーというような合意ができつつあるのが、アメリカのすごいところです。
本書の著者は、マーケティングリサーチやコンサルティングサービスを提供している「IDEO」(株式会社イード)に在籍する棚橋弘季氏。人間中心設計の専門家です。
ところが、ここまでノウハウが公開されていても、こういった姿勢が重んじられるようになるには、まだまだ時間がかかるような気がします。
「担当者はやりたいと思っても、会社の理解が得られない」という問題と、「やりたいと思っている企業も担当者もまだ少ない」という問題があるからです。
棚橋さんは、丁寧なモノづくり姿勢、仕事姿勢を世の中に広めるために、この本を書いたのかもしれません。とても共感する考え方です。
この本について、ただ1点残念なのは、タイトルですね。内容を読む限り、これは「デザイン思考の仕事術」と言うよりも、「ユーザ指向の企画術」と言われる方が意味としてはわかりやすいです。「ユーザ指向」ではあまりキャッチーではありませんが。
「デザインとは、人間自身の生活、生き方、そして、生命としてのあり方を提案する仕事」「物に意味を与える仕事」と捉える棚橋さんは、マーケティング戦略を考えるのも、業務プロセスを改善するのも「デザイン」であると語っていますので、その文脈ではまさに「デザイン思考」なのだと思いますが、多くの人は「デザイン=絵を起こす作業」と思っていますよね。「デザイン思考」というタイトルであると、「デザイン? 関係ないや」と思われるなど、読者を狭めてしまう可能性を感じました。
さて。
実際、この本はワタシが理想とする企画へのアプローチととても近いのですが、先ほども書いたように、現実はそう簡単ではありません。残念ながら、ここまでじっくり時間をかけたいと思っているクライアントは多くないからです。プランから実行までの期間は短いですし、プラニングにかけられる時間もあまりないのが実態ではないでしょうか。どの現場もバタバタと追いたてられるように仕事をせざるを得ない状況にあるのだと思います。「急がばまわれ」と思っても、やはり現場としては急がないわけにいかない、そんな現実があります。
ですから、今は、理想を描いた上で、そのエッセンスをどこまでコンパクトに取り入れられるかが重要ではないかと思っています。少なくても、私たちはそのような視点で仕事をしています。
明日は別の本を紹介します。<a href="http://www.amazon.co.jp/多発発想-アイデア・ダンプ-中山-マコト/dp/4806128120" target="_blank">「アイデア・ダンプ」</a>。グループワークとは異なるアプローチですが、本質は今回ご紹介した「デザイン思考の仕事術」と似ている面があります。ではまた