長嶋茂雄という人
20日と27日の2日間、NHKスペシャルで「ONの時代」という番組をやっていました。プロ野球界の2大巨星、長嶋さん・王さんへのロングインタビューを含めたドキュメンタリー番組でした。現役時代、監督時代を含めて、いろいろな後日談が取り上げられていて、とても感銘を受けました。
まず、長嶋さんがあれだけのロングインタビューを受けたのは、倒れて以来、初めてだと思います。「いろんな意見があったけれど、自分は、自分の姿をファンに見てほしかった」と語ったその言葉は、まさに本心だったのだと思います。
長嶋さんは、現役時代、自分が人知れず練習しているところをファンには見せなかったそうです。見せなかっただけでなく、自分がもがきながら練習していることを明かさなかったらしい。それは「プロは本番で魅せてなんぼ」という意識が徹底していたからです。
この気持ちは、ワタシにもなんとなくわかります。プロ野球の超一流選手と、小さな会社の社長とでは、立場が違いすぎますけど、ワタシもどちらかといえば、「自分はがんばった」と自分の努力を内外にアピールするのは、社長たる者として違う気がしています。社長は、がんばったかどうかではなく、お客様に評価いただける組織をつくり、ちゃんと利益を出して、スタッフをきちんと処遇することが最大の仕事なので、どれだけ働こうが、どれだけ大変だろうが、それをアピールして内外の評価を得ようとするのは決してカッコいいものではないと感じます。もちろん、ワタシは長嶋さんほど影響力のある立場でもなく、人間ができていないので、あそこまでストイック(?)にそれを貫いてはいませんが、長嶋さんの気持ちの本質はなんとなく理解できました。(だいたいこんなことを書いている時点で、ワタシも頑張っていますけど、敢て言いませんよ、と書いているようで、返って憚られます)。
そんなふうに人知れず練習している姿を見せなかった長嶋さんが、今、自分のリハビリの姿を見せ、インタビューに応じています。恐らく、長嶋さんにとって、取材を受けている時点で、それが「本番」を意味するのでしょう。リハビリの姿を通じて、人を魅せることを考えてさえいるような気がしました。実際、現在リハビリ中の多くの人々にとって、その姿にどれだけ勇気づけられたか、想像に難くはありません。
もう1つ感動が甦って来たのは、長嶋さんが西本選手のひっそりとした引退試合に出向いていったことでした。温かいエピソードです。
長嶋さんも王さんも、周囲が作り上げた自分のイメージの中で、それを壊さない生き方を選んできました。「滅私奉公」という言葉は、今の時代、とかく時代錯誤的なイメージがありますが、二人にとっては、それこそが自分がこの世に生まれてきた理由であると感じ取り、最後は滅私奉公的生き方が信念にさえなったのではないかと思います。
先ほど「ストイック」という言葉を使いましたが、西本さんがいいことを言っていました。長嶋さんという人は、自分が楽しんでこそ、周りを楽しませることができると信じていたのではないか。そんな語りがありました。そうだとするなら、もしかしたらストイックであることを苦行と考えずに楽しんだ人であるのかもしれません。
ストイックを楽しめる境地。目指したいけど、まだまだです。
NHKスペシャル番組サイト
第1回(2009年9月20日)
第2回(2009年9月27日)