本音という切り口で考える企業内コミュニケーション
3月16日から始まったセミナーも明日で一巡りし、終了します。こちらについてはまた改めて書くとして、セミナーの最後にオマケで紹介している本や映画があります。その中からひとつを今日は紹介させていただきます。
「ホンネで動かす組織論」(著:太田肇、ちくま新書)です。アマゾンでたくさん星がついていたので購入しました。人にとって、「本音」とは、何なのでしょう? 裏と表でいえば、裏も表もなく語ることが「本音」。それが、わかりやすい本音の基準だと思います。つまりは、人の思惑に左右されず自分を正直に出せるということです。しかし、かといって、自分を正直に出したら失敗することもありますし、だからこそ、人はなかなか本音を出さなくなるのでしょうね。
この本には、冒頭の「『お客様第一』のウソ」という章はもとより、あるだろうなという社会の矛盾がたくさん出てきます。たとえば、同志社大学政策学部教授である筆者ならではの事例としてこんなものがありました。大学は『遅刻するな、欠席するな』というが、本当に学生が出席したら席がない、これが、本音と建前のギャップだと。確かにそんな話は社会の至るところにあるような気がします。
企業内コミュニケーションを考えるとき、意外にこの本音の出し具合が重要だと私は思っています。「全社一丸となって」という常套句も、使ったらいけないわけではありませんが、そろそろ使い方を考え直した方がいいと思います。
数日前の日経でも「都合学」という学問的アプローチが紹介されていました。東京大学工学系研究科の大沢幸生教授が提唱しているのだそうです。日本語では「今日は都合が悪くて」などと言いますが、この「都合」という言葉に当てはまる外国語はないようです。大沢教授は都合の裏にある本音を引き出せば、製品開発や経営戦略づくりに活かせると考えてこの研究を始めたと記事に書かれていました。
少子化が進み、国内マーケットがシュリンクする中、多くの企業がグローバル化を目指しています。でも、本音をストレートに言えない組織で果たしてそれが成し得るでしょうか。意見はあって当たり前、意見が言えない人がリスペクトされないのが世界では普通のことでしょうから。そんな視点からも私は本音のコミュニケーションがしにくい状況を改善することが企業における重要な課題ではないかと思います。
もちろん、これは日本人の精神文化を変えることにも通じるので、簡単ではありませんけどね。日本人の得意とする「機微」を理解する力を活かしつつ、思ったことを率直に言える組織になれたら、これほど強いものはないと思います。
皆さんはどう思われますか?