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企業内コミュニケーションの原点「What」にこだわる

 こんにちは。小野です。

 ワタシは性格的にも物事を深堀りしやすい質なのですが、最近は、まるで哲学者のように企業コミュニケーション(特に社内コミュニケーション)について考えています。

 「コミュニケーション」という言葉が使われるとき、一般的には2つの意味で使われますよね。一つは「あの人はコミュニケーション能力がないから…」というような文脈で使われる、どちらかといえばFace to faceのミクロ的なコミュニケーション。1:1のコミュニケーションです。もう一つは、「当社のコーポレートコミュニケーション戦略は…」とか、「当社の社内コミュニケーションを活性化するために…」というようなマクロ的なコミュニケーションです。テレビCMなどのマス広告は、まさにマクロ的なコミュニケーションで、1:n(1対多)のコミュニケーションです。(最近はTwitterを代表とするネットコミュニケーションもありますから、1:n:nという構図になっていますけど)

 企業の中で、トップは1:1のコミュニケーションと、1:nのコミュニケーションを同時に行っています。いや、トップに限りませんね。少なくてもリーダーである人は1:1と、1:nの両方に関わっています。そして、1:1はうまくいっているが、1:nがうまくいかないという場合もあれば、その反対の場合もあるかもしれません。少なくても、nの意識は千差万別なので、どこに照準を合わせるのかという難しさがあります。

 企業活動では、ビジョンがあり、経営目標を達成するために、全体がチームとなって行動する必要があるわけですが、それだとイメージが持ちにくいので、個人に置き換えて考えてみましょう。たとえ話です。
 Aさんは、仕事とは別に、ラーメンの食べ歩きが趣味でした。趣味が高じて、国内だけでなく中国探訪もするようになり、今では、「日本一の中華麺評論家になりたい」という意欲を持っていました。そして、「そのために中国各地の麺を100回食べに行き、本を書こう」「そのためには無駄遣いはせずに旅行代金を貯め、現地の人とコミュニケーションを取るには中国語を話せるようになる必要もあるし、麺づくりについても学ばないといけいない。おもしろい読み物を書くための文章力も養いたい」とこんな風に考え始めました。

 「日本一の中華麺評論家」というのは、人からそのように認識されたいという意味で、ブランドアイデンティティの規定とも言えますし、ビジョンだとも言えます。
 「そのために中国各地の麺を100回食べに行き、本を書こう」というのは、中長期的な大目標です。
 「無駄遣いはせずに旅行代金を貯め、現地の人とコミュニケーションを取るには中国語を話せるようになる必要もあるし、麺づくりについても学ばないといけいない。おもしろい読み物を書くための文章力も養いたい」というのは、そのための小目標だとも言えますが、仮にAさんが無駄遣いしがちな人で、どちらかといえば引っ込み思案な人であるなら、自己変革テーマでもあります。

 つまり、目標にはざっくり言って3つのレイヤーがあります。
1 ポジションとしてのゴール:日本一の中華麺評論家になる
2 ポジションを得るための大目標:中国各地の麺を食べる取材旅行を100回し、本を書く
3-1 大目標を達成するための小目標(増やすべき行動や能力)
   ・旅行代金を貯める
   ・中国語でコミュニケーションできるようになる
   ・麺づくりについて知識を習得する
   ・文章力を鍛える
3-2 大目標を達成するための体質改善(なくすべき行動)
   ・無駄遣いをしない
   ・消極的な態度をとらない

 さて、この場合、Aさんは「日本一の中華麺評論家になる」という目的意識があるから、無駄遣いをやめようと思えるわけです。「日本一の中華麺評論家になる」ことが自分にとって意義のあることだと心から思えるからこそ、その努力ができますが、中途半端な思いなら、その努力も続きません。

 これを企業に置き換えてみると…。
 1番の「ポジションとしてのゴール」を目指す意義が共有できていないときに、小目標(3-1)や体質改善(3-2)の話をされても、人はやる気が起きません。また、1番と2番のつながり、2番と3番のつながり、3番と自分のつながりがわからなければ、自分ごとにならないものだと思います。

 さて、話を元に戻すと、リーダーはこれらのことを1:1、1:nの関係の中で伝えていく役割を持っています。単に伝えるだけでなく、納得や共感を得られているかどうかが、ゴール到達や目標達成にかかってきます。
 しかし、一番の発信元は、トップである社長です。ところが、とかく社長はビジョンを繰り返し語らず、3番や2番をベースにコミュニケーションしているのではないでしょうか。

 1番がしっかりと腹に落ちさえすれば、2番3番は与えられなくても、みんなが知恵を出せるようになる。そう考えると、実は1:1かとか、1:nなのかではなく、トップはクドいほどに、1番を語るべきではないでしょうか。それでなくても、1番を腹に落すというのは大変なことですから。Appleのスティーブ・ジョブズやソフトバンクの孫さんは、そういうことをやっているのではないかと想像します。ところが、Whatをきちんと設計せずに安直に表面的に捉えてしまうと、繰り返して語っても目的は達成されません。Howももちろん重要です。でも、Howの前に、ビジョンというWhatに徹底的にこだわって、伝える内容を練りこむ。そのメッセージアーキテクトが企業内コミュニケーションの原点だと思います。

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ブログを書いている人

小野真由美

グラスルーツの代表。組織をただの集団ではなく、チームにするための組織内コミュニケーションはどうあるべきだろう?…なんていうことを、いつもツラツラ考えています。ブランディングやコミュニケーション、チームやリーダシップ系の話題が7〜8割、その他の話題が2〜3割。そんなブログを目指します。ぜひおつきあいください。

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