PM理論から考えるトップメッセージの発信
前回、「企業内コミュニケーションの原点「What」にこだわる」というテーマでトップのビジョンの発信について、書きました。今日は、PM理論からトップメッセージの発信の仕方について考えてみたいと思います。トップメッセージの発信に関わる方の参考になれば幸いです。
PM理論というのは、社会心理学者、三隅二不二が提唱したリーダーシップ理論であると同時に、組織風土の分析等にも活用されています。
わかりやすく意訳しますと…。リーダシップには「目標達成機能(Performance function:P機能)」と「集団維持機能(Maintenance function:M機能)」があり、その強弱によってリーダーを4つのタイプに類型化できるとしています。
P機能:叱咤激励したり強く明快な指示により集団の目標を達成する働き
M機能:人間関係や和を重んじ、チームワークを維持する働き
<%image(20100530-PMtheory.jpg|574|271|PM理論概念図)%>
P機能が強ければ、一方通行的な指示や命令が多くなり、M機能が強ければ、議論や合意が尊重されることが多くなります。もちろん、長所と短所は裏返しですから、M機能が強ければ目標達成ができなかったり、P機能が強ければイエスマンが増えるといったことも起きがちです。
P機能とM機能の両方ともが高ければ、自由闊達な組織風土であると同時に、組織のモラールも個人のモチベーションも高くなり好ましいわけですが(図の右上)、多くの場合、そう簡単にはいきません。
図の右上を目指そうとするのであれば、トップのメッセージは現状を補完する形で設計されるべきだとワタシは思います。P機能が強い風土なら、M機能に配慮したトップメッセージにすることで、共感が生まれます。M機能が強い風土なら、敢て意図的に強い意思、強い要求をメッセージに託すことで、緊張感が生まれます。
しかし、現実世界では、そんな読み解きが行われないまま、トップはインタビューに応え、それがそのまま映像や活字になって内部に流されているのではないでしょうか。「オレ流」「ワタシ流」の方が個性が出て良い場合ももちろんあります。けれど、個性を貫くことは目的ではありません。
以前、ある企業の社内報分析を行ったことがあります。社長交替が行われてから1年経った時期でした。強力なリーダーシップ、まさにP型の経営で社内を大改革していたのですが、社内のモチベーションは上がっていませんでした。理由は、メッセージがP的表現で書かれており、「なぜ」や想いが書かれていなかったのです。
経営スタッフ部門が、トップの話をストレートに流すだけなら、それはアシスタントであって、参謀とはいえません。トップメッセージの発信に携わる経営スタッフ部門は、PMの目盛り合わせをトップとの間で行うべきですし、ライターを雇うのであれば、表現のニュアンスの擦り合わせをした上で取材の場を設けることをお勧めします。殊に、話し言葉で誤解を得やすい人ほど、書き言葉で補っていくことが重要です。
経営スタッフ部門は、トップの参謀です。そんな視点で仕事を再点検すると見えてくることがあるのではないでしょうか。