日経ビジネス「社長の発信力ランキング」を読んで
「日経ビジネス」(4月30日号)で「社長の発信力ランキング〜『言葉の力』が企業を強くする」という特集が組まれていました。各社の社長がマスコミやブログなどに登場した回数を調査し、その内容を指数化してランク付けしたようです。ちなみに総合ベスト3は:
1位:ソフトバンク社長/孫正義氏
2位:ファーストリテイリング会長兼社長/柳井正氏
3位:日本銀行総裁/白川方明氏
誌面に登場していた著名でカリスマ性のある経営者が広報というものをどのように捉えているのかと、大変興味深く読みました。と、同時に、今回の特集はあくまで外部広報に関するものであり、社内向けの情報発信力は調査の対象外でしたが、仮に社内広報で同じような調査を行ったとしても、概ね似たような結果になったのではないかと思いました。
一般に自社がどれだけマスコミに登場したかについて、その露出度を広告換算しようとする考え方もあり、掲載媒体別に成果報酬を取り決めているPRコンサルタントも存在していますが、本来、自社の考え方に対して、理解を得るための活動が広報の本質だと思います。それをわかっている経営者は、理解を得るためにコミュニケーションを重んじており、その一環として対外広報を位置づけているのではないでしょうか。
現にファーストリテイリングの柳井さんの記事に、次のような件がありました。以下、引用です。
その姿勢は社内外を問わず一貫している。そして、相手が納得するまで何度でも同じ事を発信し続ける。「言う」ことと、「伝わる」ことの違いを理解しているからだ。
「自分が言いたいことを言って終わりでは何の意味もない。相手に納得してもらえない限り、伝えたことにはなりません。
だから僕は、相手が納得して動くまで、同じことを何回でも言うんですよ。1回言って分かるような人間は、100%いない。だから伝わるまで、100回でも1000回でも言い続ける」
まさに、経営コミュニケーションのお手本です。
もう一人、第1位だった孫さんのインタビューも今更ながらにおもしろかった。本音で語り、批判も正面から受け止めることで「裸の王様にならずに済む」し、「ボコボコにされずに済む」と考えているようです。それを読んで、心理学で言われる「ジョハリの窓」を思い出しました。
「ジョハリの窓」では、他の人には見えているのに、自分では気づいていない自己(盲目の窓)や、自分では気づいているけれど、他の人には見せてない自己(隠された窓)を小さくしていくことで、自己成長もできれば、コミュニケーションも円滑になると言われています。さらに、「盲目の窓」を小さくするには、フィードバックを得ることが重要で、「隠された窓」を小さくするには、自己開示が重要なのだそうですが、まさにその両方を積極的に行っているのが孫さんなのですね。
社内・社外にかかわらず、また社長・社員など立場の違いにかかわらず、自分をわかってもらう努力/相手をわかろうとする努力は大切ですね。「『言葉の力』が企業を強くする」というサブタイトルは私の信条でもあります。『言葉の力』でクライアント支援をしていきたいと改めて思ったと同時に、ワタシ自身も自社に向けたコミュニケーションを大切にしなければ…。そんな自戒の念とパッションが同時に湧いてきた記事でした。