『自分の小さな「箱」から脱出する方法』
表題の本を、友人の経営者が知り合いの経営者から勧められたというので、ワタシも読んでみました。アマゾンでは、星が4つ半。全米でベストセラーになったと言われるのが本書『自分の小さな「箱」から脱出する方法』(著:アービンジャー・インスティチュート、刊:大和書房)です。
この本は、自分の中のウソに気づかず、自分を正当化し、相手を責める(あるいはその気持ちを抱く)ことによって、人間関係の何が損なわれてしまうのか、どんな悪循環に陥るのか、「自己欺瞞」という心理学的な事柄をわかりやすくストーリー仕立てで紹介していますが、家族関係などの例を挙げながらも、最終的には組織論として書かれており、経営者が着目する理由もそこにあるようです。
本書では、自己欺瞞という言葉を「箱」に入った心理状態という言葉に置き換えて説明しています。自己欺瞞に冒されている人ほど、自分に問題があることが見えなくなる、と。そして、その自己欺瞞は、自分が他人のためにすべきだと感じながらも、その行動を取らなかった時にしてしまいがちな、自分を正当化することから始まるとしています。自己正当化のために、相手を必要以上に非難し、やがてはその正当化された自己イメージを持ち歩くようになるのだとか。自分がこんな状況に陥っているのは、ダメな夫/妻、能力のない部下が悪いからであって、自分はこんなにやっている等々です。
ワタシは、どちらかといえば、常々プライドを持つことよりも素直であること、やましいことをせずフェアであること等を価値観の上の方に置いている人間なのですが、この本に書かれている通り、どんなに箱の外にいようとしている人間でも、箱の中に入ったり出たりするというのは本当のことだと思います。ワタシも例外ではありません。大筋では、自己欺瞞に陥らないようにとは思っていても、日常のこまごまとした生活の中には、自己欺瞞的なことが潜んでいます。
本当に優れたリーダーは箱の外に居続けようとする人である、本当に強い組織はみんなが箱の外に出ている状態にある、という著者の主張は、耳を傾けるに値すると思いました。ストーリーは、幹部候補としてザクラム社に入社したトムが、入社1カ月にして早くも「君には問題がある」と言われるところから始まり、経営者のバドによってコーチング的な手法でリーダーのあるべき姿を理解していく物語になっており、コーチングに興味のある人にもおすすめの1冊です。お時間があれば、読んでみてください。ではまた。