ミーティングで大切な「言葉の意味合わせ」
グラスルーツでは、ブランディングや広報をテーマとする会議のファシリテーションを請負うことがあります。「こうあるべきでは?」と提言するのとは違い、参加者が答えを出せるように議論のテーマを設計し、ミーティングを進行します。
今回書くのは、おそらくすべてのミーティングに共通する重要な点であり、出した結論に対する会議の参加者の納得性を高めるコツだと思いますので、参考にしていただけたら幸いです。
それが何かといえば、タイトルに掲げた「言葉の意味合わせ」です。
当然のことながら、日本人同士の会議では、日本語が使われます。だから、意味合わせなど必要ないように思われるかもしれません。ところが、ドッコイ。日常的に使っているような言葉(小学生でも使っているような言葉)であっても、言葉の定義は各人各様で意外にもバラバラなのです。
たとえば、「ターゲット」という言葉があります。日本語では、「標的」とも「対象」とも置き換えられます。ここで、もっともらしくターゲットは「F1層」であるなどという会話で済ませてしまうと、後で大変面倒なことになります。「対象」と考えるなら、「F1層」でもいいのでしょうが、「ターゲット」というのは「対象」以上の意味があります。どういうことかといえば、こちらの記事に書きましたが、「ターゲット」を決めるというのは、そもそも絞り込んでなんぼ、なのです。一見すると「F1層」と言っただけでも絞り込んだような気持ちになりますが、どんな価値観、どんな感情を抱いている人なのかを決めないことには意味を成しません。「ターゲット」というのは、そういうものであると全員で共有していないと、「F1層」でも良いという認識に引きずられて、会議はそのまま進行してしまいます。
他にも例はたくさんあります。
「チームワーク」という言葉について、ある人は「団結することだ」と考え、別のある人は「各自が自分の責務を全うすることだ」、また別のある人は「同じ方向を向いて、目的を達成しよとすることだ」と考えていたとします。そのような状況のまま「チームワークを大切にすること」を運営方針に掲げても、果たして機能するでしょうか。しませんよね?
「スピード感を大切に」と言う場合も同様です。仕事自体の効率性を上げて、スピードを高めることを意味するのか、早急に決断し行動に移す、すなわち行動までの時間を指すのかなど、さまざまな解釈が成り立ちます。
日本人は以心伝心という文化の中で育っていますが、ある事柄について、意識的に明確にしようと思ったら、実は以心伝心などできないのではないでしょうか。曖昧なものを是とした文化の中だけで、以心伝心はありうる。
日本人同士の日本語の会話。実は、それほど生易しいものではないのです。しかし、そこで深い意味合わせを行っておけば、言葉は単なるお題目ではなく、機能するようになります。
そんな視点で、会議での会話や仕事上の会話を見直すのも一考です。私も、言葉に対して、繊細な感覚で社員とコミュニケーションしたいと思います。