改善力を養う〜制作業務の「質」と「効率」
現在、あるお客様の業務効率化のコンサルを行っています。グラスルーツが「業務効率化」をテーマに仕事をしていると聞いて、意外に思われる方も多いのではないでしょうか。正確に言えば、内製で発行している社内誌など、広報ツール全般の質を向上させるとともに、業務効率もアップさせるためのコンサルティングです。
一般に、業務の「質」と「効率」は相反する関係にあるように思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。そもそもの目的を整理し直すことによって、従来通りの形を続けることがベストとは限らないからです。組織の中では「これまで、こうだった」という理由だけで、内容も方法も見直されずに継続されているということが意外に多いものです。
雑務は「改善力」を養う最大のトレーニング
さて、すべての仕事は「質」と「効率」のバランスの上に成り立っています。どちらか一方だけを追求していたのでは、良い仕事をしているとは言えません。けれども、別のあるお客様から聞いた話によれば、最近はそれを取り違えてしまって、入社まもない若手社員が「雑務」を嫌い、雑務に意味を見いだせないと訴える傾向もあるのだそうです。
若いときに、そう考えてしまうのは無理もありませんし、上司の力量が足りないのかもしれませんが、その考え方にずっと縛られていくと、トレーニングの機会を失い、モッタイナイことになります。なぜなら、雑務を雑務にしてしまうのも自分だし、雑務を仕事にするのも自分だからです。
どういうことかといえば、雑務を雑務にしてしまう人は、その仕事の意味を考えず、言われたことを言われたままに続け、意味を見失う。雑務を仕事にする人はその本質を考え、その業務が必要かどうかを判断し、必要だったとしても他のやり方はないかを考えます。
業務の本質が何かを問うトレーニングとして、いわゆる「雑務」と正面から向き合うことはとても意味のあること。改善力のようなものを身に付けるには不可欠なことなのです。それが、「質」と「効率」のバランスを両立させるために、とても大きな力になります。カイゼンで有名なトヨタは、恐らくそうした企業文化を大切にし、その発想が社内に浸透しているのだと思います。
雑務から逃れられるのは、一見良さそうではありますが、自分を育てる機会を失うことになり、長い目で見ると、損失につながる可能性があります。
100メートル競走のトレーニングでは障害物競走には勝てない
「雑務」に定義はありませんが、人が雑務と感じるのは「隙間の仕事」をしている時かもしれません。あるいは陸上競技に例えるなら、ただの100メートル競走に参加したつもりで、いざ走り出してみたら、やたらハードルが多いような感覚とも言えるでしょう。しかし、仕事はそもそも100メートル競走ではなく、障害物競走です。「隙間の仕事」がない仕事などありません。障害物競走で優勝しようと思ったら、最初から障害物競走だという発想でトレーニングすることが必要だと思います。
社内報制作でも、効率化するためのノウハウというものが存在します。そのノウハウも、雑務と感じることに真っ向から向き合ってきたから得られたのです。
改善に強いことと改革に強いことは別の適性だと思いますが、どちらかを自分の武器にしないと、価値ある人になれません。現状維持に価値はないからです。
社内報制作に携わっている方も、そうでない方も、「隙間の仕事」の意味を白紙で考えてみませんか? スキマちゃんたちは改善されることを待っていると思います。若い人たちを応援したいがあまり、エラそうなことを書いてしまいました。一意見と思って、読んでください。
10月がスタートしました。気持ちのよい1カ月にしたいものですね。さ、がんばっていきましょう!