プロの仕事
先週、2つの出来事から「プロの仕事」について考えさせられました。いずれも個人的な体験であって、仕事を通じての体験ではありません。でも、学びがありました。
壁紙職人さん
一つは、壁紙張り替え工事の職人さんの仕事ぶりから感じたことです。
わが家では現在、リビングを中心に壁紙の張り替え工事を行っています。職人さんが来て古い壁紙を剥がし、下地を整え、今日からは本格的に新しい壁紙を張る作業に入ります。天井が吹き抜けになっていて、高さが5メートル以上あるだけに、大掛かりな足場を組まないまま作業を進める技術は、それだけでも素人の目には驚きの連続です。しかも、脚立がなければ拭き掃除ができない窓ガラスを拭いてくれたり、コンセントのプラグや壁に備え付けられた照明やダウンライトの器具を全部外してくれて、せっかくなので一緒に手入れすることを勧めてくれました。
実は半年ほど前に、トイレの入れ替え工事を別の会社に頼んだ際にも、壁紙の張り替えを行ったのですが、その時は、コンセントのプラグも換気扇も取り外されずに終了し、換気扇の汚れがやけに目立つと思ったものです。
プロの仕事として付加価値の高いサービスを提供してくれていることに大変満足し、感心もしているのですが、でも、それ以上に一番感心しているのは、素人にはわかりにくいことをきちんと『説明』してくれることでした。「新築時の内装工事会社がこういう工事を行っているが、そのためにこういう弊害がある、それをカバーするために、こういう処理を行います」とか、「この部分は異なる素材が接合されているために、今後、こういうことが起きると予想されるので、こういう処理をしておきます」等々。
契約上は無事に仕上がればいいのでしょう。でも、「結果」、すなわちこの場合のきれいな仕上がりというのは顧客にとって当然のものでしかなく、本当の満足にはつながらないものなのです。一方で、説明を含めた「プロセス」で満足すると「大満足」につながるのだなと痛感しました。
看護師さん
もう一つは、母が入院している病院での看護師さんの対応から感じたことになります。医療従事者が不足していて、過酷な労働環境にあるということは承知していますが、この際なので、それはそれとして書こうと思います。
率直に言って、看護師さんは2種類に分かれています。患者の心を思って、コミュニケーションする人と、事務的に対応する人の2通りです。母は、今日、80歳の誕生日を迎えますが、老人といえども、「人として、何が大切か」ということについてはうるさい方で、その分、相手の本音を見抜く能力も衰えるどころか、磨きがかかっています。母いわく「同じことを言うにしても、ただ事務的に『できません』の一点張りではなく、『申し訳ないけれど、こういう理由でご希望に添えない』と言ってくれれば、こちらもわがままは言わない。言い方ひとつで相手の気持ちは随分と変わるものだ」。母のこの言葉には「プロとは何か」を考える上で十分なものがありました。
もちろん、事務的な看護師さんばかりではありません。母の一番のお気に入りの看護師さんは、ミカさんという若い女性で、談話室で私と話している母の姿を見かけただけでも、向こうから来て、気さくに声をかけてくれます。それが、たとえ1分でも30秒でも母はうれしいのです。ほかにも優しい看護師さんもたくさんいます。看護師さんが向ける小さな言葉で、母は希望を抱いたり、傷ついたりしてしまうのですが、残念ながら、事務的な看護師さんは相当数います。看護師さんの数が増えたところで、事務的な看護師さんが減るかといえば、それは恐らく別の問題のような気がします。
共通するものは?
この二つの出来事に共通することは何でしょうか。本当のプロの人たちは、壁紙を張り替えればいい、病気が治って退院すればいい、とは思っていない、ということなのです。相手の気持ちに寄り添って仕事をし、それを含めて良い仕事だと思っている、ふとそんなふうに感じました。
私たちグラスルーツも、良い成果物を納めるのは当たり前であって、それだけでは並の仕事だという自覚でやっていきたいと思います。