リーダーのプレゼンテーション〜安倍さん、黒田さんの数字の使い方
昨日は風が強い一日でしたが。被害などには遭われなかったでしょうか。
さて、先週4日の金融政策決定会合後の会見とそれに対する社会の反応は、とても興味深いものがありました。政界、財界、投資家、エコノミストは総じて歓迎し、その期待はすぐに円安株高となって現れました。結果がどうなるかは未知数であるにせよ、経済に希望が持てるというのは、とても良いことです。
ワタシが興味を持った点は、安倍政権の誕生以降、リーダーたちは「メッセージはわかりやすく」という姿勢を従来になく意識しているように見えることです。
第1次安倍政権の際に、安倍さんは「美しい国、日本」を唱え、わかりにくい印象を与えましたが、昨年の発足時には「経済再生」への強い決意を印象づける所信表明演説を行いました。
パブリックスピーチについては、さまざまな人が研究を行い、書籍もたくさん出ています。ワタシもビジョン伝達のセミナーでは要点を話していますが、人の心を動かすスピーチには共通点があり、安倍さんのスピーチもその定石に叶ったものでした。
ここで、それについて細かに解説しませんが、ダイヤモンド・オンラインに参考になる記事がありましたので、ご参照ください。
わかりやすいスピーチの条件として、数字の使い方というのがあります。
黒田日銀総裁は、「2年で物価上昇率2%、2倍の資金供給」と「2」を上手に使いました。もちろん、印象に残すことを第一にして、政策を決定しているわけではないでしょうが、それでも「2」を使って政策をわかりやすく印象づけることに成功しました。
黒田さんは、昨年12月時点で138兆円だった資金供給を、14年末には270兆円に拡大するとしています。でも、270兆円を138兆円で割ってみれば、1.95倍です。切り上げたんですね。仮に、1.95倍を目指すと言っていたら、どうだったでしょうか? わかりにくいですよね。物価上昇率も、マイナス成長であったり、コンマ数パーセントの成長しか達成できていない現在の状況で、本来は0.1%違うだけでも大きく違うと思うのですが、ここで、1.7%成長を目指すと言ったら、やっぱりわかりにくい。
一方の安倍さんが使っているのは「3」です。「経済再生」「震災復興」「危機管理」という3本柱を立てました。また、「経済再生」では大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を「三本の矢」と呼んでいます。実際には、3つのことしかやらないわけではない。でも、話を聞いた人は、数が増えれば増えるほど複雑になり過ぎて、覚えられません。一番重要なことと、その次の重要なことを一緒にしない。安倍さんは、プレゼンテーションの方法を相当研究されたのだろうと想像します。
私たちもプレゼンを行うときや記事を書くときに、何が相手の印象に残ったら成功かを先に考えます。そうなのです。「先に」考えるのがポイントです。あれも言おう、これも言おうという気持ちでいるときに、絞り込むのはとても難しいのです。でも、相手の心に何を残したいか、それに接した後にどんな気持ちになってほしいかと考えると、絞り込むことができます。
リーダーのプレゼンテーションは信頼を獲得し、人に希望を与える上でとても大切ですね。安倍さんの言うように、これからの日本を創っていくのは私たち以外の誰でもありませんね。私たちも、信念を持って仕事をし、日本の経済に貢献しないと。。。と思った先週でした。