知っていること、やっていること
「ホスピタリティって何だろう? 具体的にどんなことをすることだろう?」
先日、新入社員の入社に寄せて、ワタシは珍しくスピーチしたのですが、その中でスタッフに対しそんな問いかけをしました。
「相手の立場に立って考えること」「自分の主張を押し付けるのではなく、思いやりを持って接すること」。若い人の大半がそんなことを答えました。質問の前半「ホスピタリティって何だろう?」の方に反応した形です。
一方で、年長者の回答は…。「相手の目を見て話す」「一般的に良いことと言われているから、やる、というのは自己満足で…」等々。こちらは質問の後半「どんなことをすることだろう?」という問いかけに答えてくれた形です。
実は、ワタシの質問の意図は、「どんなことをすること?」の方だったのですが、回答が分かれてしまったのは、ワタシの投げかけ方に不明瞭さがあったからだと思います。
さて、この後、ワタシが考えたことは、「知識」と「行動」のギャップについてです。
「知識」として知っていても、具体的な「行動」まではイメージできていない、というのはよくあることですが、経験の浅い人ほどその傾向は強くなるような気がします。ええっと、紛らわしいのですが、これは当社の話ではなく、一般的傾向がそうではないかという話をしています。
たとえば、上の例であれば、知識としては、「ホスピタリティとは相手の立場に立ち、気持ちに寄り添って行動すること」とわかっていても、実際に、相手の目を見て話す、会議では黙り込んでいない、飲み会で自分から話題を提供する、自分から「手伝いましょうか?」と言う、自分宛の電話ではなくても名乗る、服装は相手の文化に合わせる…等々を、ホスピタリティと結びつけて理解できていない。その結果、「知識」と「行動」が乖離しがちです。上司はまず「知識」を教え、その後で「行動」についてフィードバックする形になりますが、そもそも「ホスピタリティとは相手の立場に立ち、気持ちに寄り添って行動すること」と「会議では黙り込んでいない」が同義と理解できていなければ、コミュニケーションは上手くいきません。
当社の場合も、「知識」と「行動」が一致している場合もあれば、一致していない場合もある、というのがワタシの自社評価です。
こういうことが起きるのはある意味、仕方のないことです。「経験の浅い人ほどその傾向は強くなる」と書きましたが、実はこうしたことは若い人に限ったことではありません。ワタシも含め、多くの人は概念としては知っていて、やった方がいいとわかっているのに、やっているかと聞かれるとやっていないことがたくさんあります。
たとえば、「PDCA」という言葉は最近のビジネスパーソンであれば、多くの人がその意味を知っているのではないでしょうか。計画し(Plan)、実行して(Do)、検証し(Check)、改善する(Action)という一連の流れによって、昨日よりも今日、今日よりも明日と、業務水準を上げようという考え方を意味しています。そして、「PDCAとは?」と聞かれて、その意味を答えられる人は多いでしょう。でも、実際に実行している人はとても少ないし、組織として取り組めている企業はさらに少ない。
「PDCA」の例でいえば、「知識」と「行動」を乖離したままに終わらせず、きっちり「行動」にまで落とし込んだ企業の最高峰がトヨタなのだと思います。
人は「知っている」という気持ちになると安心してしまいます。自分に「やっているか?」と問うことを忘れてしまうのです。もっといえば、頻繁に聞いた言葉は「知ったような」気分になって、でも説明しろと言われるとできないということさえ起きます。
「知っている」と「やっている」は天と地ほど違うこと。それを私たちは肝に銘じておく必要がありますね。
新たに仲間に加わったMさん、入社記念に改めて「ホスピタリティ」という言葉を贈ります。「知識」で終わりにせず、「行動」を追求してみてください。
もう1月も後半です。皆さん、良い1週間をお過ごしください!