「co-」という関係の可能性〜信頼と意図をシェアするとどうなるか?
「船頭多くして船山に登る」という諺があるように、「リーダーが二人いる」と聞いて、一般的に連想するのは、意見が分かれて機能しない状況ではないでしょうか。私たちがそういう連想をするのは、「リーダー」や「リーダーシップ」というのは、誰か「一人」が主導権を握ってリードしていくもの...という固定観念に縛られているからだと思います。私たちは、信長と秀吉が対等な関係で天下統一を目指すなどということは、ありえないと思っていますし、総理大臣や大統領が二人いる社会など、想像さえしません。(ここで、総理大臣や大統領が二人いた方がいいという主張をしたいわけではありません。)
今日、お話したいのは、「リーダーシップは誰か一人がイニシアチブを発揮するもの」という固定観念に縛られれていると、その組織やプロジェクトに関わる人たちが発揮する力も限定的になるのではないか、ということについてです。
以前にも書きましたが、ワタシはこの春から10カ月に渡って「コーアクティブ・リーダーシップ」というリーダーシップモデルに関する研修会に参加し、学んでいます。すでに半分が過ぎました。「コーアクティブ」というのは、「協働的」という意味です。自分の力を100%発揮することはもちろん重要ですが、自分一人でできることの限界を知り、異なる個性の人々と力を合わせることができてこそ、1+1=2以上の力になる...。「コーアクティブ・リーダーシップ」を探求するこの研修は、1+1=2以上の力を追求する、そんなリーダーのための学びの場だとも言えます。
ワタシが、「コーアクティブ・リーダーシップ」という考え方が良いと思うのは、このコンセプトは言い方を変えると「一人でやろうとしないリーダーシップモデル」であるからです。実生活で、リーダーは自分一人だが、周りの人の協力なしにはうまく事が運ばない...ということはいくらでも起きます。ところが、妙な責任感が働いて「自分が何とかしなければ...」という思考パターンに陥るリーダーは、かなり多いと思います。かくいうワタシも該当します。
人間が二人集まれば、性格や能力はもちろん、意見や考え方も違って当然です。そのときに、どのように意思決定したり、合意形成するのかによって、1+1は2以下にもなれば、2以上にもなります。
一般的な合意形成では、論理的な説明競争を経て、どちらかが折れて1つに収束していくという経過をたどります。
では、そうした従来のアプローチとは異なる方法は、ないものなのでしょうか。あるとしたら、いったいそのプロセスにおいて、何が重要なのでしょうか。
「コーアクティブ・リーダーシップ」研修を通じて、ワタシが今、学んでいるのは、先に「関係性」を築くというアプローチです。つまり「信頼」関係を築き、何のために行うのかという意図を合わせるのが先、問題解決は後...という順序になります。しかも、ただの信頼関係ではなく、こんなことを言っても大丈夫だろうか等、相手に対して恐れを抱かない関係、100%素の自分でいていい関係を目指す必要があります。一見遠回りのようなのですが、最初にそういった警戒心を解いてしまうと、問題解決はとてもスムーズに運びます。
さて、現在、同じ「コーアクティブ・リーダーシップ」仲間の小林文子さんと、来月13日(月祝)にワークショップを開催します。独立したばかりのプロコーチ/カウンセラーを対象とした「自分を伝えるキャッチフレーズづくりワークショップ」です。お陰さまで、昨日定員に達しました。小林さんは、「ホンネのつぶやきを価値に変える。ヒキダス・マーケティングコーチ」。ワタシと彼女に共通するのは、(1)「言葉」の力を信じている、(2)シンプルでわかりやすいことを大切にしている、の2点です。企画内容も、そんな二人だからこそのものになっています。
さて、このプログラム、実は二人の間では「コーアクティブ・リーダーシップ」のあり方を実践しようという意図もあります。週末を中心に昨日が8回目のミーティングでしたが、その内6回目の途中ぐらいまではコンテンツ(問題解決)の話ではなく、お互いを知り合ったり、意図を合わせるための時間でした。意図を合わせるというのは、どんな人に何と感じてもらったら成功なのか、です。「どんな人」をすり合わせるということは、相手の気持ちを分解してみることでもあり、とても重要なプロセスなのです。
この方法で進めてみて感じるのは、前半のおかげで、後半の問題解決フェーズになると、アイデアがどんどん出てきます。普通なら、こんなことを言ったら相手はどう思うだろうか?という気持ちが働くと思いますが、伸び伸びとした気持ちでいるので、アイデアを出しやすいのだと思います。また、決定も早い。いろいろなアイデアの中から「その案がいい」と決めるのは、他を捨てることになりますが、そこに遠慮などの変なストレスがありません。そのように解放的な感覚、自由な感覚で対話していると、夢も膨らみます。「今回はできなくても、こういうことが今後できるかもしれない、できたらいいよね...」という具合です。だから、とても楽しい。
ワークショップまで、対面して打ち合わせできる回数はあと2回。「マーケティング的なコムズカシイことをわかりやすく」にこだわって、準備を続けることになりそうです。
さて、このような話を聞いたあなたは、実際の業務では意図合わせや関係作りにそんなに時間はかけられない...と思われたことでしょう。その通りですよね。でも、ワタシの現在の仮説は、そうであったとしてもこのアプローチは有効なのではないかと感じています。たとえば、最初に、全体の時間の半分強を関係作りと意図合わせに使おうと決めたとします。上に書いた私たちの例では合計10回ミーティングしていますが、半分の5回だったとしても、あるいは3回だったとしても、関係作りや意図合わせを重んじた時間配分にするという意思を持つことは可能です。そうすることで、後半の内容固めはきっとスムーズに行くのではないかと思うのです。
やってみなければ、わかりません。でも、このプログラムもそれを掴むために行っています。キーワードは「問題解決のその前に」です。その意識で試したいことはたくさんありそうです。
まもなく10月ですね。今年もあと3カ月だと思うと身が引き締まります。
今週も元気に参りましょう!