「下町ロケット」を読んで考えた、チームって何だろう?
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
皆さんは、どんな年末年始を過ごしましたか?
私は実家の両親を訪ねた以外は、さしたるプランもなく、家でオンデマンドで映画を観たり、本を読んで過ごしました。
読んだ小説は、「下町ロケット」(著:池井戸潤/小学館文庫)。12月に退職したOさんが贈ってくれた1冊で、池井戸潤の直木賞受賞作品です。
作品は、町工場と大企業の攻防の物語で、会社とは? 仕事とは? 夢とは? 生きるとは?という問いかけとともに、大企業と中小企業の構図や、反対する/協力する/傍観する人々の心理とその変化が興味深く描かれています。
7年前に宇宙科学開発機構の主任研究者だった主人公・佃航平は、ロケット打ち上げに失敗し、責任を取って辞任。現在は、ロケットエンジンのバルブシステムで世界最先端の特許を持つ佃製作所の2代目経営者です。そんな彼の会社に、次から次へと困難が押し寄せてきます。突然の取引中止、特許を巡る攻防、いずれも相手は大企業ばかり。それでも屈せず、困難を切り抜ける中で、利害で敵対するロケットメーカーに対し、自分たちが開発したキーデバイスの納入を求め、プライドを賭けて戦います。その間に社内は意見で対立。経営者である佃航平に対して、若手社員が猛反発を繰り広げたりする。それでも、ロケットメーカーからの屈辱的で不当な扱いに対し、自社のアイデンティティに目覚め、プライドを軸に社内は団結。高度なテストを乗り越え、ロケットエンジンのキーデバイス、バルブの納入を実現させます。
痛快なのは、侮辱することが目的であるかのようなメーカーテストの過程で、「相手は所詮中小企業」と舐めてかかっている審査員に対し、「なにか勘違いされていませんか」と迫るシーン。一気に形勢が逆転します。
さて、この本を贈ってくれたOさんは「この本を読んだ時、もしかしてオノさんが目指している"チーム"とは、こういうことなのかな、と思ったのを覚えています」とカードに書いてくれました。それで改めて、自分が何を目指したいのだろうと考えてみました。感想とともに記します。
この物語において、佃製作所のメンバーが自社のアイデンティティにこだわり、プライドを賭けて、同じ価値観で1つのゴールを目指す姿はまさにチームの理想であると思いました。また、反発が源とはいえ、社長に対して社員が意見を言えている社風も、私が目指すチームの姿に近いです。かといって、社長の佃航平は「非の打ち所のない経営者」というわけではありません。社内の若手から受けた反発を見ていると、気の毒に思うくらいでした。意地悪な口調で批判する社員に対し、プロセスに問題があったのかな、とか、でも自分にだって夢があり、社員の希望に添うことが第一なら自分の夢は置き去りにしろというのか、などと逡巡する経営者で、そこにむしろ親近感を抱いたとも言えます。
反発がありながら、なぜ社内がまとまったのか、それは帝国重工という仮想敵があったからです。社長の佃航平も社員も、仮想敵というよりも、リアルな敵だと感じたことでしょう。社内がまとまったのは、有事だったからです。また、皮肉なことに、反発が起きたのも、経営危機があったから、すなわち有事だったからです。このような有事の時に、社員がどう感じるのか、私も経験したことがあるので、想像できます。
反対に、もし順風満帆で経営がうまく行っているとしたら...? 生じる出来事も、社内に流れる感情も、まったく違うものだったはずです。ここまでガッチリとまとまらなかったかもしれません。
私が考えるチームは、尊敬し合いながら、率直に意見やアイデアを出し合え、恊働しながらも持ち場持ち場で責任を全うし、100%力を出し切っての誰かの失敗をナイストライと捉え、力を出し切らなかった失敗は何やってんだ!と(愛をベースとした)厳しい声を掛け合い、むしろ早めに失敗して学習するメカニズムを持った組織です。
書きながら思いましたが、相当にハードルが高いですね〜 この中でも一番重要なのが、「尊敬し合いながら、率直に意見やアイデアを出し合える」環境をつくることだと思います。周知を集める環境なくして、後のことはありえないと思います。ただし、当然、人それぞれ意見は異なりますから、リーダーは、意見の対立があったときや、自分と異なる意見が出されたときに裁く技術が求められるでしょうね。
チームのあり方に正解はありません。当社も、チームとしての理想を常に追求し、お客様や社会に対し、良いアウトプットをしていけたらと思います。
2015年、良い1年としたいものですね。