冒険心を何に向ける? 「NEXT WORLD〜私たちの未来」を観て
NHKスペシャル「NEXT WORLD〜私たちの未来」(上の写真は同番組のサイト)を観ました。1月3日から2月8日まで全5回の放映だったようですが、私が観たのは、昨日8日(日)の最終回です。番組のコンセプトは、30年後の2045年を「NEXT WORLD」と定義し、現在のテクノロジーがどこまで進化するのか、未来のテクノロジー世界を紹介していました。「寿命はどこまで延びるのか」「人間のパワーはどこまで高められるのか」「人生はどこまで楽しくなるのか」などに続き、最終回の昨日は「人間のフロンティアはどこまで広がるのか」がテーマでした。
30年後というと、当社の創業(1984)から昨年(2014)までと同じ期間です。その30年は、あっという間に過ぎましたので、2045年がやってくるのも、思いのほか早いことでしょう。しかし、番組を観ていたら、たとえば火星への移住というようなことが、ここまで現実的になってきているのかと、正直なところびっくりしました。
NASAは、2040年代に火星に人類を送り出すことを目標に掲げているそうですが、オランダのNPO法人「マーズ・ワン」(Mars One)は、NASAよりも早い計画、すなわち10年後の2025年を目指して、火星移住を実現させるプロジェクトをすでにスタートさせています。2013年に移住希望者を募ったところ、なんと世界中から20万人以上が集まったのだとか! すでに24名を選出していて、その中には小野綾子さんという日本人女性も含まれています。
東京オリンピックが2020年です。そのわずか5年後! 予定通りのスケジュールで実現できるかどうかはさておき、10年後というのは、SF的な世界ではなく、間近なところにある未来です。
番組を観ながら、私は2つのことに興味を持ち、注目しました。
「民間」での事業化はここまで来ている!
1つは、これまでNASAやJAXSAなどの国の機関が推進の原動力だったのに、「民間」が独自でプロジェクト化しているという状況について、です。ロケット開発のベンチャーという分野で最も最先端にあると言われているのがアメリカのスペースX社。PayPalの創設者イーロン・マスクが設立した会社です。スペースX社の目標は、「手の届く金額で有人宇宙飛行を提供すること」と「火星に定住するのに必要な技術を開発すること」だそうです。今年に入ってから、GoogleやFidelityが巨額の出資を行っています。
民間の参入がすでに始まっているのは、ロケット開発分野だけでなく、たとえばラスベガスの不動産王は、火星でのホテル建設を計画し、宇宙での不動産王を目指していたり、地球の周りの小惑星から貴金属を採掘するベンチャー企業が現れていたり。アメリカ=ベンチャー精神を改めて印象づけられました。
日本はどうなんだろうと思って調べてみたら...。ホリエモンこと堀江貴文氏が宇宙事業を進めているという話は、皆さんも耳にしたことがありますよね。それが、打ち上げコストを一桁下げることを目標にしているインターステラテクノロジズ社です。そのほかにも、宇宙ゴミの除去をコア事業とするアストロスケール社、超小型人工衛星の開発を行うアクセルスペース社など、ここ5〜6年の間に、民間企業の新規参入やベンチャーの創業が相次いでいるようです。
でも...。日本の宇宙産業は「官儒」によって成り立っているのが現状で、しかも、国の予算は年々下がっていて、国内で宇宙産業に関わる従業員数は減少傾向にあるのだそうです。世界的には毎年14%成長とされている成長産業であるにも関わらず! うーん、考えてしまいますね。せめて宇宙での太陽光発電など、日本が先進的地位にあるとされる分野に絞り込んでもいいので、もう少し存在感を示してほしいものです。
なぜ、人は冒険するのか?
もう1つ、私が、興味を持ったのは、なぜ人は宇宙を目指すのか、火星を目指すのか、敢えて冒険するのかです。想像を超えた危険が待ち受けるであろう前人未踏の地へ、憧れるだけでなく、行くという行為を選ぶ人がいる。
ワタシなら、絶対行きたくありません。何しろ半年も宇宙船の中に閉じ込められている状況は、閉所恐怖症の身からすると、考えられません。仮にそれに耐えることができたとしても、地球に戻りたいと思っても簡単には帰れないところに行く覚悟を決めようなんて、到底思えません。つまり、端的に言えば、それほど熱狂的に宇宙へ出たいと思っていないのです。
行きたい人と行きたくない人の違いは何でしょう? それは、きっと宇宙に行くということに対して、冒険心が持てるかどうかではないでしょうか。「冒険」を辞書で引いてみると、「危険な状態になることを承知の上で、あえて行うこと。成功するかどうか成否が確かでないことを、あえてやってみること」とありました。
ワタシ自身は宇宙に対しての冒険心を持てませんが、宇宙を含めて、未開の地に惹かれる冒険家はいつの時代にも一定割合でいますよね。ヨーロッパからアメリカへの移住の歴史や、西部開拓史なども、同じようなことだったのだと思います。当時も、移民した人たちは、そこに夢を持って切り開くことを考えたと思いますが、「危険を冒して移住しようとする人の気が知れない」と思った人たちも当然いたはずです。
では、ワタシのように宇宙に行くことを選ばない人たちは、冒険嫌いなのでしょうか。必ずしもそうとは言えない気がします。辞書が示すように、冒険とは、物理的に未開の地に行くことだけではないからです。たとえば...。
宇宙旅行には行かなくても、世界を一人で旅行することが好きな人がいます。世界を旅するのが嫌いでも、絶叫マシーンに乗るのが好きな人もいます。絶叫マシーンが嫌いでも、新しいレストランができると、積極的に行ってみようとする人がいます。レストランで冒険しない人も、知らないことを学びにセミナーに行ったりする人がいます。セミナーに行くことをしなくても、ちょっとした改まった席で、勇気ある意見を述べる人がいます。意見表明では保守的な人であっても、解明できるかどうかもわからないことを研究し続ける人がいます。
こうやって考えてみると、誰しも冒険心は持っていますよね。あなたの冒険心は何とつながっていますか? それが何であれ、その冒険心が何らかの発見を呼び起こし、新しい創造にどこかで結びつくのだと思います。いや〜、身近な日常の中にある冒険心、眠っていた様々なことへの冒険心、もっと積極的に使った方がいいのかもしれませんね。
読んでくださって、ありがとうございました。どうぞ良い1週間をお過ごしください!