言葉の壁(5)〜なぜ「願い」を伝えるの?
先日、阿部貢己発のメルマガ「『なぜ?』を『どうする?』にして未来へつなげる」に対してお寄せいただいたご感想で、「NVC」のワークショップをやる予定はないのか、という質問的ご意見をいただきました。心意気としては、"Yes, we will !"なのですが、仕事として実施するには、やっぱりちゃんとした準備が必要なんですよね。
しかも、今、セミナー全体を再構築したいという思いもあり、もう少し温めてから、NVCとしてなのか、そのエッセンスなのかはともかく、何らかの形でいつかやりたいなと考えています。
さて、先日のブログの最後にも書きましたが、平田オリザさんの「わかりあえないことから」を読み終えて、とてもおもしろかったので、そちらのレビューを書こうと思っているのですが、まだ手つかずです。
では、今日配信のメルマガをシェアさせていただきます。
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NVC(Nonviolent Communication)について考える「言葉の壁」シリーズ。
これまでの4回を振り返ってみましょう。
まず、気持ちのいいコミュニケーションを分解すると、
「観察」「感情」「必要としていること」「要求」の
4つの要素で構成されています。
自分に葛藤を与える他人の言動について、
評価や判断を交えずに「観察」に基づいてシンプルに語り、
自分がどう感じているか「感情」を述べ、
感情の原因は「自分が何を必要としているからだ」と自分の願いにあることを語り、
最後に具体的な「要求」をする、、、、
NVCが示す理想のコミュニケーションがそのような流れのものであることは、
第3回で書きました。
例としては、こんな感じです。
【1】NVCではない例(イライラの原因は相手にあるとして、攻撃している例)
「田中君、例の書類、明日が提出日なのに、未だに状況説明がないけど、
君は、自分の責任をどう考えているんだ?
当日、その場で初めて見るなんてことになって、恥をかかせないでくれよ。
いったい、いつ見せてもらえるの?」
【2】NVC的な例(イライラの原因は自分の願いにあるととらえ、要求している例)
「田中君、例の書類、明日が提出日なのに未だに状況説明がないと、
どうなっているか心配で、イライラするんだ。
というのも、ブラッシュアップしてベストなものを出したいからなんだよ。
ブラッシュアップする時間も必要だから、今現在の状況を説明してくれない?」
はっきり言って、上司からこう言われたら、どっちの場合でも焦ると思います。
でも、【1】のように言われた場合はムッとする反応が多くなり、
【2】のように言われた場合は申し訳ないという反応が多くなるのではないか、、、
と、そんな気がするのは、私だけでしょうか。
さて、今日のテーマは:自分の感情(どちらかといえば負の感情)を
自分の願いと紐づける、です。
でも、たとえば報連相ができない部下に対して、
「組織人として、こういうことは常識だと思ってほしい」とか、
「組織である以上、一人で動かれても困る。そんなこともわからないのか!」
...と相手を否定する心理になること、ありますよね〜 よくわかります。
でも、NVCでは、誰かの言動が自分の感情を刺激することはあっても、
その感情を生じさせる原因そのものではないと考えます。
原因は、相手の言動ではなく、自分の願い、すなわち
自分が必要としていることにあると考える。
さて、これを聞いて、腑に落ちますか?
「組織人として、こういうことは常識だと思ってほしい」と思っている時に、
「『私の願いが、〜だからだ』と伝えるべきだ」と言われても、
あっさり、そうなのか...とは思えないのではないでしょうか?
私が腑に落ちるまで過程でも、心の中でいくつもの問いかけが
生じました。
1)相手を攻撃することが目的なのか?(NO)
2)相手に望むこと、応えてほしいことがあるのか(YES)
3)攻撃して、それは叶うのか(NO)
4)反対に、もし自分がリーダーではなく、
応えてほしいと望まれる部下の側なら、リーダーからどう言われたいか?
4番目の問いが一番むずかしい問いでした。
最初に浮かんだ私の答は、「もっともらしいこと、お決まりのことはいらないから、
その人らしい言葉で、答えを聞きたい」というものでした。
つまり、「本音」で接してほしい、私が部下ならそう思うな、、、と思ったのです。
そして、その言葉は、私への愛から発せられた言葉であってほしいし、
その人自身に対しても、周りに対しても真摯に誠実に生きようとしているからこそ、
発せられた言葉であってほしいと思いました。
では、話を元に戻して。。。
自分の感情を、自分の願いとつなげて話してくれると何が伝わるのでしょう?
相手は、何を感じ取るのでしょう?
私は、もし自分がそう伝えられたなら、
その人の価値観やポリシーを共有されたと感じると思います。
そして、もうひとつ重要な点は、自分のネガティブ感情の原因を責任転嫁せず、
自分で引き取っている他責でない姿勢に信頼感を抱くと思います。
たとえ「それ、ちょっと違うよ」と否定されるようなことであっても、
「なぜなら、自分はこんな仕事をしたいんだ」と言われたら。。。
その人の精神の根っこの部分をシェアしてもらえたと感じ、うれしく感じます。
結局「本音」で接してほしいというのは、そういうことではないでしょうか。
要望や要求も「その人の願い」「叶えたい思い」という形で伝えられると、
人はそれに応えたくなるものなのかもしれませんね。
さ、5月も後半に突入しました。今週も元気に過ごしましょう!
※読んでいただきありがとうございました。
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今回は、自分の感情の源にある願いを語るというのは、「弱さを見せるようでイヤだ」と
思う方もいるのでは? 「弱さ」について島崎藤村の残した言葉です。