アイデアを出しやすい環境、どうつくる?
ヘアサロンで、雑誌「ELLE」(2015年12月号)を読んでいたら、
「現代人が"テンプレ脳"化する理由」という記事を見つけました。
結婚式で聞かれる「育ててくれてありがとう」という新婦の言葉や、
映画の宣伝文句「全米が泣いた」等に代表されるテンプレート化された言い回し、
さらには、そこに疑問にも思わなくなった思考パターンを指すようです。
「テンプレ脳」という言葉がキャッチーで、興味を引きました。
確かに、常套句や紋切り型表現が多用されていたり、
感動を誘うための決まり言葉がお約束のように使われていると、
辟易することはありますよね。
聞かされる側、読まされる側はそう感じますが、
言う側、書く側がそれを使ってしまうのは、
「想定通りの反応」、つまり「安心」を手に入れたいからなのでしょう。
脳の研究で知られる池谷裕二さんが、その記事でインタビューされています。
紋切り型の表現は、コミュニケーションをスムーズに行うために不可欠なもので、
社会に属している以上、それを手放すことはできないというのが池谷さんの見解。
むしろ歴史の中で残ったすべてのアイデアは紋切り型だとも言えるし、
その膨大なピースの中から、どれかとどれかを組み合わせることで
新しいアイデアが生まれる...、というような内容です。
まあ、これはアイデア論での通説ですし、反論はありませんが、
誰もがそれを器用にできるのか、というとできないのが現実です。
いったい、どうしたらアイデアは出やすくなるのでしょうか?
ちょうど最近、どうしたらイノベーションが生まれるのかが
社内で話題になり、個人の意識、集団の意識、
その両方が影響し合っているという話になりました。
たとえば、誰かの発言に対し、「それは前にやったけど、ダメだった」など、
すぐにネガティブな反応を示すことが許されている職場では、
絶対にイノベーションは生まれないでしょう。
ネガティブ反応を是としている集団意識が、
それなら発言するのはやめようという個人の意識を生んでしまうからです。
つまり、個人頼みでは、解決できそうにありません。
WISDOM「ビジネス教養塾」(09/01/13)に、
《「仕事ができる」を脳科学から考察》と題された池谷さん(前出)の
アイデアに関するインタビューが掲載されていたので、要点を抜き出してみました。
・いいアイデアは、集中している時よりも、意識が分散している時の方が出やすい。
・そのような時、脳は「ゆらぎ」の状態にある。
・お風呂やトイレ、散歩の途中にアイデアが浮かぶのは、このため。
・脳の「ゆらぎ」は、環境によって大きくなったり小さくなったりする。
・私たちのやる気とかモチベーションは、内側から出てくるものではなく、
脳を刺激する環境によってつくられる。
おもしろいと思うのは、アイデアにもやる気にも、
環境による脳への刺激が絡んでいるということ。
思い返せば、たくさん思い当たることがありますよね。
たとえば、、、
一人で考えても、何も出てこないのに、人と会話するとアイデアが出てきたり。
「いいね〜」という誰かの反応がきっかけとなって、会話が盛り上がったり。
ミーティングで座る場所を変えたら、煮詰まっていた状況から脱却できたり。
とあるファッションブランドで社長を務める、
私の友人がこんなことを話してくれました。
「私は、毎朝《ブレンド&リード》と念じてから出社している」と。
《ブレンド&リード》というのはリーダーシップのあり方を示すと同時に、
会議の参加者の発言を上手に拾って、ミックスしながら
一つの方向性へとまとめていくスキルでもあります。
たとえば、「このアイデアのいい点は〜だね」と拾ってもらえるので、
参加者にとっては「安心」できる環境が生まれます。
彼女は、それがいかに重要かがわかっているから、毎朝念じている。さすがです。
まとめます。
アイデアを出しやすくするには、
「安心」、「ゆるさ」、程よい「刺激」を作ること。
加えて、アイデアを出しやすい環境はみんなで作るもの、
予めそう全員で合意しておくことも必要かもしれません。
アイデアが出やすくするためのアイデア、
それを考えるのはリーダーの仕事かもしれませんね。
11月も後半戦。どうぞ良い1週間を!