ブレストの功罪
最近よく考えること、
それはどうしたら最大限に創造的かつ協働的なプロセスをつくれるか、です。
もし、そのプロセスをモデル化できたら、
お互いにストレスがなくなるし、組織としての生産性も高まります。
個人と組織の学習能力も高まるかもしれません。
うーむ、素晴らしい社会ができるかも...。
私のライフワーク的テーマの一つです。
結論的なことは何もありませんが、
考えを進める足がかりとして、
今日は「ブレスト」を題材にしたいと思います。
「ブレスト」と略されるいわゆる「ブレーンストーミング」、
あなたも参加したことがあるのではないでしょうか。
なかったとしても、アイデアを出し合う場であることはご存知だと思います。
今や「Brainstorming」という単語になっていますが、
「Brain(脳)のStorming(嵐)」とは、すごい単語ですね。
うちの会社でも、「ブレスト」と呼んだり、「アイデア会議」と呼んだり、
表現は様々ですが、そのようなミーティングは日常的に行っています。
私もメンバーの一員として参加することもあれば、
自分がリーダーのプロジェクトに参加協力を求めることもあります。
しかし、、、
「ブレスト」はもっと進化すべきと感じているのも事実。
これまでの慣習に縛られない「ブレスト」のあり方、
あるいはこれまでの「ブレスト」とはイメージが違うような
「ブレスト」以上に創造的で協働的になれるミーティングのあり方が
あるのではないか、それが私の今の問題意識です。
早稲田大学ビジネススクール准教授/入山章栄さんが
日経ビジネスに書かれた連載記事(2014年4月30日〜)によると、
「アイデア出しが目的のはずのブレストが、アイデアを出すのに効率が悪い」ことは
すでに研究結果として明らかなようです。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140425/263513/
具体的には、5人が顔を突き合わせてブレストするのと、
5人が個別にアイデアを出して最後にアイデアを足し合わせるのとを比較すると、
後者の方がバラエティ豊かなアイデアが出やすいそうです。
主な原因は、
・「他者への気兼ね」があること、
・「集団で話すときは思考が止まりがち」であることなど。
同感です。
私が感じる「ブレスト」の問題点は;
第一に、本来は合意形成の手段ではないのに、
「ブレスト」の場にそのような役割を担わせてしまっていること。
オレンジジュースやアップルジュースをつくるよりも、
ミックスジュースをつくることが合意形成には重要だし、
複合的に考えられた分、思考が深い...という
そんな思い込みがあるのではないか、ということです。
第二に、人にとって、本当はピンと来ないものはピンと来ないわけです。
これまでの「ブレスト」では、
ピンと来ていなくても膨らませる姿勢が求められているような強迫観念があり、
ピンと来ていない人が無理して膨らませて、
第一次発言者が汲み取ってほしかったイメージが汲み取られない...
あるいは、「ピンと来ない」と勇気を出していったものの、その後もその罪悪感が付きまとったり...
そんな場になりやすいことです。
この二番目について、もう少し書きますね。
「ブレスト」で起きるのは、
「あ、これは素晴らしいアイデアかも」と思ったり、
あるいは「これは、役に立ちそうな視点かもしれない」と思って発言した人がいると同時に、
それを聞いて「どうもピンと来ないな」と思った人や、
「ああどうしよう、自分にはアイデアが出ない」と思っている人が、
同時に存在しているという事実です。
しかも、自分が発言している状況と聞いている状況の両方が起きるので、
銘々がどの心理にもなりうる。
「ブレスト」にはそういう心理と状況変化が常にあるのではないでしょうか。
その中でもピンと来ないことについては、もうどうしようもありません。
なぜ、そうなるのか?
これは、人と人のバックグラウンドがそもそも違うから起きることです。
誰かが、どんなにユニークなコンセプトについて発言しても、
最初の段階で周りの人はそれを理解できません。
そのアイデアがユニークであっても、なくても、
過去の体験が異なれば、1つの単語から膨らむイメージや
その単語が持っている概念自体も違います。
だから、即座にイメージを共有できないのは当然のことです。
つまり、「ブレスト」において「ピンと来ない」状況を打破するためのノウハウや
そのためのプロセスはまだ確立されておらず、それが「ブレスト」の限界になっていると感じます。
しかも、通常の「ブレスト」ではアイデアの質よりも量を追求するのが基本なので、
「ピンと来ない」状況を解決しようとしたら、
当然、量の追求はできなくなるというジレンマがあります。
加えて、ではせっかく出されたアイデアが量を出すことを追求するあまりに、
出しっぱなし、すなわち「ピンと来ない」人が多いままに済ましてしまっていいのか、
というジレンマもあります。
さて、そんな問題にさらされている「ブレスト」ですが、
「ブレスト」にはメリットもあります。前出・入山さんは、
組織に重要なのは、組織の誰が何を知っているか(トランザクティブ・メモリー)、
組織としてどんな価値基準を持っているのか(メンタルモデル)を
全員が知っていることであるとし、
「ブレスト」にはそれらを高めるメリットがあると言っています。
創造的なアイデアを協働して出しやすくする方法やプロセス。
それは大いに研究の余地がありますね。
今の「ブレストのここがおかしい」から始め、
どうすると協働してアイデアを構想レベルに高めることができるのか、
まだまだ工夫の余地がたくさんありそうです。
この続き、また書きますね。
では、良い一週間をお過ごしください。