「未経験者も納得の、社内広報研修プログラム」
コクヨ株式会社 広報コミュニケーション部 奥山 由希子様/星 剛様
コクヨ様には社内広報担当者を対象にした、出張研修プログラムを提供いたしました。2日間にわたる研修は、①コクヨグループの現状を確認・共有するためのプレゼンテーション(コクヨ様ご担当)、②グラスルーツによる「社内広報の基礎力UP講座」「文章構成ワークショップ」、③「今後、どんな社内広報を行っていきたいか」についてディスカッション(コクヨ様ご担当)の3部構成で実施されました。
違いがシナジーを生むチームに! 「物事を考える際のコツ」を身につける
奥山さん:2014年1月、広報部門の中に社内広報専門の「インターナルコミュニケーショングループ」が新設されました。その背景には、コクヨグループがここ数年でグローバル化に大きく舵を切ったことがあります。創業以来100年あまり、国内を中心に事業を展開していた時期は、理念や価値観を社員全員が無理なく共有することができました。しかし、歴史も言語も文化も異なる海外となると、簡単にはいきません。そこで、社内広報専門の部署として、"国をまたいだ共通の土壌づくり"という難易度の高い課題に取り組むことになりました。
「コクヨの企業理念や価値観を浸透させ、独自の風土を育む」。それが、私たちの部署のミッションです。具体的には、Web社内報「YOU ONLINE」の制作運営や企業理念浸透のための場づくりやツールづくりを行っています。多くの場合、理念や価値観は言葉の理解に留まりがちですよね。しかし、社員一人ひとりがそれを自分なりに咀嚼して、具体的な行動へと落とし込んでいかなくては、どんなに立派な理念も機能しないと思うのです。最前線で汗水流す社員のロングインタビューや新しい価値を生み出そうと奮闘する各事業会社の取り組みを伝える特集など「YOU ONLINE」のさまざまなコンテンツは、そうした思いの表れです。
グループ新設にあたってはスタッフも増員され、日本に5名、上海に2名(兼務)の7名体制となりました。しかし、そのほとんどが編集経験ゼロの社員。最初の半年は、こまめに指示を出すことで乗り切りましたが、次第に「このままではいけない」と焦りを募らせるようになりました。やる気は十分あるのに、基本的な知識やスキルがないために思うようなアウトプットができない。そんなメンバーたちのジレンマを解消する手はないものかと思うようになりました。
新しくこのグループに合流したメンバーたちは、ステーショナリーやファニチャーなど事業会社出身の人間もいれば、コールセンターなど間接部門出身の人間もおり、出身も年齢も多種多様。だからこそ、さまざまな視点から意見が出され、その化学反応でこれまでにない発想が生まれる可能性がある。個々の経験の違いが強みとなる、そんなチームを私はつくりたいのです。そのためにはまず、一人ひとりが「物事を考える際のコツ」を会得する必要があると考えました。「物事を考える際のコツ」とは企画のアプローチ方法のようなもので、社内広報の土台となる力です。これを身につければ、全員が同じ土俵に立って議論することができるはず。そんなことを漠然と考えていた折、以前から面識のあった小野さん(グラスルーツの代表)を訪ねてみようと思い立ちました。
社内広報の基礎力UP講座:"問題を解決する"のが社内広報の仕事
奥山さん:文章力や企画術のセミナーは一般的ですが、社内広報というニッチな分野に絞り込んだセミナーはそう多ありません。小野さんからお話を伺ううちに、「私が求めていたのはこれだ」と確信を深め、出張研修を依頼することに決めました。中でも社員の「感情」に着目し、そこから社内広報が発信すべきメッセージを組み立てるという方法論がとてもユニークだと思いましたね。私自身、長年社内報制作に携わってきて、立派な内容より、例え稚拙であっても読み手の心を揺さぶる内容の方が反響が大きいことを、肌で感じていましたから。
研修当日は、社内広報の基礎力を養う講座と原稿を書く技術を身につける講座、2つ併せてご提供いただきました。 「社内広報の基礎力UP講座」にはワークショップがいくつも盛り込まれているのですが、その題材にコクヨ独自の概念である「信頼の連鎖」を用いて、内容をアレンジしていただきました。「信頼の連鎖」とは当社の社長・黒田章裕が提唱するもので、コクヨが理想とする組織の状態を表していますが、人によって理解の程度にバラツキがありました。ここでのディスカッションは、参加者一人ひとりが「信頼の連鎖」とは何であるのかを考える、非常に良い機会となりました。
それから講座の冒頭で、社内広報の役割は「報じる」ことではない、「問題を解決する」ことだと言われたときにハッとしました。当社は、昭和30年代から継続して社内報を発行しています。ですから、いつの間にか発行すること自体が目的化してしまい、「誰の、どんな問題を解決するために発信しているのか」という視点での掘り下げが十分でないことがわかりました。常々、部下には「手段と目的を混同しないように」と話していますが、その私自身が落とし穴にはまっていることに気づかされましたね。
星さん :「社内広報の基礎力UP講座」では「マインドセット」という企画のブレない軸をつくるための手法を伝授していただきましたが、研修の後、「YOU ONLINE」の「国誉人」というインタビューコーナーについて早速試してみたのです。各自が案を持ち寄ったところ、「若い社員たちに、爽やかな戦闘意欲を吹き込むコーナーにしたい」「読んだ後、廊下で会ったら声がかけたくなるようなコーナーに」など、血の通った意見がどんどん出てきてびっくりしました。そして活発な議論の末、全員の意見を合体したコンセプトが出来上がりました。「個々の経験の違いが強みとなるチーム」。私たちが目指すチーム像に向かって、小さな一歩を踏み出せたように思います。
文章構成ワークショップ:文章は才能じゃない。ステップを踏めば、上達できる!
奥山さん:「文章構成ワークショップ」では、文章の書き方のセオリーを教えていただきました。私は以前よりまわりの人たちに「あなたは文才があるから」と言われてきて、その度に「文章は才能じゃないのに」と複雑な気持ちになっていました。今回受講してみて、文章は基本のセオリーさえ押さえておけば訓練次第で上達できることを確信し、すっきりしましたね。
星さん :私もこれまで感覚でやってきたことに裏付けができて、とても勉強になりました。また、物事の結果と自らの視点を入れた結論を明確にして文章の構成を考えるなど、新たに学んだこともたくさんありましたね。早速メンバーへの原稿指導を、「①結果・理由・詳細・結論の4ステップで構成を考えてもらう」→「②構成のチェック」→「③実際に原稿を書く」という流れで進めることに。メンバーからは、「本当にこの内容でいいのだろうか?」と不安な気持ちを抱えたまま原稿を書くことがなくなったと言われました。
最前線で奮闘する社員に、社内広報を通して勇気と元気を届けたい
奥山さん:今回研修を受けて、「グラスルーツさんは良いコンテンツをお持ちだなあ」と実感しました。社内広報の本質をとらえた内容が盛りだくさんで、これは相当な武器だと思いますよ。また、事前準備をはじめ、一つひとつ丁寧に立ち止まって話し合いを進めてくださるスタンスがとてもありがたかったです。その結果、機械的に進めたのでは得られない納得感がこちらにも生まれました。
世の中に社内報を発行している企業は相当数あると思いますが、多くの人たちは「つくらなければいけないから、つくっている」状態にあると思います。自分の仕事が誰のために、どんな問題を解決するために存在するのかを吟味したいという方は、グラスルーツさんをお勧めします。
星さん :私はこれまで全国津々浦々の事業所を訪ね、現場で奮闘する多くの社員を取材してきました。一見穏やかでも、一人ひとりの内側には熱い想いがたぎっています。そして、そういった想いに基づいた行動から学べることは多いと思っています。グループの社員にしっかりと共有し、他の社員のアクションにも繋げていく役割を果たしていきたいです。
奥山さん:コクヨ社員の特長は真面目で実直、こつこつと諦めずに仕事するところ。当たり前すぎるぐらい当たり前のことを、声を大にして言うところが好きですね。これからも、社内広報を通して彼らに勇気と元気を届けていきたい。日々地味な活動の積み重ねですが、その先には手応えのある未来が広がっていると信じています。